奥田雄太作品集 Circulation

著:奥田雄太

発行:求龍堂
発行日:2023/3/19

判型:A4縦変型判(297×225mm)
頁数:216p
製版・印刷:プロセス4C、特色1C(シルバー)+グロスニス、スミ、カバー、帯はマットPP加工
用紙:ユーライト、NTラシャ 漆黒、Mag-Nプレーン
製本:糸かがり上製本

今回ご紹介するのは、アーティスト・奥田雄太氏の初作品集『奥田雄太作品集 Circulation』です。

生きとし生けるものは循環する。
そのCirculationを大胆な色彩と緻密な線で描く。
初期の細密画、花のwith gratitudeシリーズ、そして最新作のCirculationシリーズまでを網羅した、圧倒的なボリュームの奥田雄太の世界。

―求龍堂ホームページより

奥田雄太氏は、日本とイギリスでファッションデザインを学んだのち、ファッションブランド「TAKEO KIKUCHI」でデザイナーとして活動。2016年にアーティストに転向した奥田氏は、国内での個展やグループ展に精力的に参加し、制作と発表を続けキャリアを築き上げていきました。

初期は、計算した線のみで構成された細密画を発表してきましたが、ここ数年は「偶然性」に重きを置いた“花”の作品を中心に発表を続けています。さまざまな色味で表現される花はポップなイメージが強いですが、花びら一つ一つに緻密な線描が施されています。奥田氏自身、花に見えなくてもいいと語り、確かに具象としての花ではありませんが、とても魅力的に映ります。

奥田氏曰く、「自己をサルベージ(救出・救助)する」なかでたどり着いた、幼少期の記憶がもととなっており、緻密な描線に幼少期の記憶が表現されているそうです。近年は、コロナ禍をきっかけに、当たり前と感じていたことが実は特別な出来事だったと気づき、「感謝を作品にしたい」という思いから「with gratitude」をテーマに作品を製作しています。

本書は、奥田氏にとって初めての作品集。作品を描き始めた2011年の初期作品から2022年の新作まで網羅し、作風の変遷がわかるような構成となっています。鮮やかな色彩と緻密で繊細な線に魅了されますので、ぜひご覧ください。

また2023年2月25日(土)まで、ミヅマアートギャラリーにて、奥田氏の展覧会「Circulation」が開催中です。どうぞお運びください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

メイン画像は干支をイメージした作品については、ピンク・ブルー・イエローの発色がメインの鮮やかすぎず、濁った印象にならないようにしました。モノクロ作品は見当ズレを注意し、細密な墨線は色浮きしないよう調整しています。

実際にギャラリーで現物を拝見すると、作品のダイナミックさに圧倒されました。全図では色鮮やかな発色に見えますが、個々で見ると印刷インクのような僅かに濁りを感じる発色でした。但し、実際、印刷でインキを盛りすぎると作品のイメージを逸脱してしまうような、非常に難しい作品でした。特にピンクやブルーもやや黄味のあるエメラルド色に近い発色で、黄味が多すぎると濁りが生じるような微妙な色彩です。

暗部にもひび割れた模様があり、黒の締りとディテールを出すことを両立させることが必要でした。但し、ディテールを優先すると黒の締りが弱くなり、黒の締りを優先するとディテールは失われてしまいます。このように、非常に繊細な作品のニュアンスを再現するにあたり、大変苦心いたしました。製版設計においてはハイライトの設定は通常通りにしつつ、暗部は明るめに設定。BK版(ブラック)はハイコントラストに設定しています。

印刷では刷版で中間部が出すぎないように調整。インキ量をある程度盛り込むことで締りのある絵柄に仕上げつつ、ディテールが失われないように印刷しています。大変迫力のある作品集に仕上がったと思います。

協力:ミヅマアートギャラリー
編集協力:波多野晃(ミヅマアートギャラリー)
撮影:宮島径、奥田雄太
翻訳:Andreas Stuhlmann(英語)、牟微姣(中国語)
ブックデザイン:加藤賢策(LABORATORIES)
編集:深谷路子(求龍堂)

奥田雄太 「Circulation」 – MIZUMA ART GALLERY

2023年01月25日(水) – 02月25日(土) ミヅマアートギャラリーでは1月25日(水)より奥田雄太によるミヅマアートギャラリー(東京)では初となる個展「Circulation」を開催いたします。 1987年愛知県生まれの奥田雄太は、日本とイギリスにてファッションデザインを学んだのち、ファッションブランド「TAKEO KIKUCHI」でデザイナーとして活動。 …