梁丞佑写真集 ヤン太郎 バカ太郎 日英版
著者:梁丞佑/Yang Seung-Woo
発行:禅フォトギャラリー/Zen Foto Gallery
発行日:2021/9/18
判型:B5縦変型判(200×200mm)
頁数:144p
製版・印刷:プロセス4C、プロセスシアン/マゼンタ+特色2C(特黄、蛍光黄)、表紙はグロスPP加工
用紙:b7トラネクスト、OKトップコート+、タント N-55
製本:糸かがり上製本
今回は、2021年に刊行された写真家・梁丞佑(ヤン・スンウー)さんの写真集『ヤン太郎 バカ太郎』をご紹介いたします。
『ヤン太郎 バカ太郎』は梁丞佑 (ヤン・スンウー) さんの自伝的エッセイを含む写真集です。韓国で過ごした幼少期の鮮烈な思い出を中心としたエッセイと、大人になった梁さんが世界各地や日本で撮影したスナップショットで構成されています。
幼少期の記憶や「原風景」が、制作物に重要な役割を果たすというのはよく聞く話である。
だから、子供心を忘れるのは、作品制作をする者にとっては一大事なのだ。
すなわち、なかなか大人になれない僕は、そのままでいいと言われているわけで…。
この作品は大人になれない僕の「原風景」の話である。
― 梁丞佑(Zen Foto Gallery HPより)
梁丞佑さんは、1966年韓国生まれ。高校時代から20代まではチンピラのような荒れた生活を送っていたそうですが、1996年に来日して写真学校で初めて写真を学びます。
学生時代から新宿・歌舞伎町に集う人々を題材として撮影を続けており、2017年、写真集『新宿迷子』(こちらの印刷も弊社が担当させていただきました)で第36回土門拳賞を受賞しました。
新宿・歌舞伎町のパワフルで刺激的な姿を撮り続けている梁さんは、日本テレビの人気番組「月曜日は夜ふかし」に出演し、「新宿の変化について調査した件」という企画でインタビューを受けたこともあります。
現在は都が主導する美化運動が進み、昔に比べきれいで安全な街になってきている新宿ですが、梁さんは以前の喧騒とカオスに溢れた新宿が「天国だった」と言います。
「安っぽい香水の匂いより人間臭い匂いがする人たちが好き」で、ハプニング的な瞬間を求め新宿を毎夜訪れ、とんでもないポーズで警察に連行される人や路上で眠る人、全裸で歌いながら徘徊する酔っ払いなどの姿を撮影した写真集が『新宿迷子』でした。
このようなアウトサイダーな人々に強く惹きつけられる梁さんもまた、ご自身がアウトサイダー的存在であり、今回の写真集『ヤン太郎 バカ太郎』は、梁さん自身が「バカですみません」と思っている、世界各地や日本の自宅などで撮影された、梁さんのバカバカしくも時折少し切ない日常の記録です。
花壇に立ちションしたり、ご機嫌に酔っぱらったり、国内外のアルバイト先での現地の人々との楽し気な様子などの陽気な写真に時折挿入される、梁さんのとても散らかった自宅の部屋、シロツメグサの腕輪をした梁さんの腕、パン工場の不採用通知などの写真に、少ししんみりしてしまいます。
「私写真」「プライベート・ドキュメンタリー」と聞くと、私はまずナン・ゴールディンが思い浮かびますが、この『ヤン太郎 バカ太郎』も一見楽し気でバカバカしく見えつつも、前者と同様の正直さや切実さが胸に迫るものとなっています。写真に添えられた梁さんの強烈な少年時代の思い出を綴ったエッセイにより、そのまっすぐな正直さは増幅されているようにも思います。
梁さんは、一度だけ、アルバイトに明け暮れる日々に辛くて写真をやめたいと思ったことがあるそうです。しかし、新宿で写真を撮りながら酔っぱらって、赤信号を無視しながら池袋の自宅に帰り着いたら「もうちょっと頑張ろうか!」と思い、現在も撮り続けています。
バカバカしくて刺激的でちょっぴり切ない写真集『ヤン太郎 バカ太郎』。ぜひご覧ください。
編集:柿沼充弘、マ ボンワイ ボニー
アートディレクション:柿沼充弘[Raven & Persimmon Studio]
英語翻訳:マ ボンワイ ボニー
日本語校正:野村ニナ
英語校正:マーク ピアソン
ヤン太郎 バカ太郎 (日本語/英語版) – 梁丞佑 | ZEN FOTO GALLERY – アジア諸国の写真を専門に紹介するギャラリー・出版社
『ヤン太郎 バカ太郎』は梁丞佑 (ヤン・スンウー) の自伝的エッセイを含む写真集。韓国で過ごした幼少期の鮮烈な思い出が綴られたエッセイを軸に、大人になった梁が世界各地を飛び回り撮影したスナップショットが配されている。 幼少期の記憶や「原風景」が、制作物に重要な役割を果たすというのはよく聞く話である。 だから、子供心を忘れるのは、作品制作をする者にとっては一大事なのだ。 …