中藤毅彦写真集 White Noise
著者:中藤毅彦/Nakafuji Takehiko
発行:禅フォトギャラリー/Zen Foto Gallery
発行日:2018/9/20
判型:B5縦型判(230×180mm)
頁数:244p
製版・印刷:プロセス4C/特色2C(スーパーブラック+特グレー)+超被膜グロスウェットニス、表紙はグロスPP加工
用紙:b7トラネクスト、ザンダーメタリックFS スチールブルー、タント S-3
製本:無線綴じPUR製本、変型観音折
今回は、2018年に刊行された写真家・中藤毅彦さんの写真集『White Noise』をご紹介いたします。
福島の原発が爆発する映像がニュースで流れるのを見た時、何かが終わったのだと感じた。ふと、ブラウン管テレビ時代、放送が終わった後に画面に映っていた砂嵐と、シャーというあのノイズが頭に浮かんだ。節電の為に灯火が控えられた薄暗く陰気な街では、放射能対策のマスクを付けた暗い顔の人々が、何かを恐れる様に当て所なく彷徨っていた。
しかし、それは終わりの始まりだった。先の見えない混迷の時代の中でも東京という怪物は、その歩みを止める事はなかった。そこには、依然として無数の肉体と営みがあり、体温を感じる古き街並と無機的な再開発のせめぎ合いがあり、東京は制御不能なエネルギーが渦巻く魔都であり続けている。
更には、2020年のオリンピックなる虚構の旗印を打ち立てて再び大きく蠢き出した。僕には、それはポジティブなエネルギーと言うよりはアナーキーで虚無的な混沌と感じられてならない。
ー中藤毅彦
中藤毅彦さんは1970年、東京生まれ。モノクロームの都市スナップショットを中心に作品を発表し続けています。本作『White Noise』は、7作目の写真集。
中藤さんが「制御不能なエネルギーが渦巻く魔都」である東京をテーマに、モノクロームとカラーの写真が織り交ぜて配置され、2020年のオリンピック開催に向けて東京が発する「アナーキーで虚無的な混沌」に満ちた写真集です。
その混沌(カオス)を写真集で体現するための仕掛けとして、造本には趣向が凝らされており、全ページ変型観音開きとなっています。表層の写真の下に潜んだもう1枚の写真を次々に開いていくにつれ、混沌はより肥大化し、東京の放つ負のエネルギーにじわじわと囚われ、蝕まれていくような感覚に陥ります。
印刷にあたり、モノクロ写真は濃いスミとグレーのダブルトーンで、ブラックが際立つシャープな印象にしつつ、暗部の諧調はクリアに。カラー写真は、極限まで彩度は上げつつも、中藤さんの意図を汲みながら要所要所で諧調を出しています。モノクロとカラーの見開きになるページでは、両者の相乗効果を狙い、ボリューム感を揃えるよう配慮いたしました。
また本文には特にツヤの出る超被膜グロスウェットニスを使用して表面に光沢を出し、よく見る光景の写真でありながら非現実感を増幅させるテクスチャーとなっていいます。
この写真集が刊行されたのは2018年でしたが、その後ご承知の通り全世界をコロナ禍が襲い、東京も現在進行形で「アナーキーで虚無的な混沌」の渦中にあります。東京が今後どのような変容を遂げていくのか、我々も「終わりの始まり」を見届けるしかないのでしょうか…
こちらの写真集は、ZEN FOTO GALLERY他オンラインでもお求めできます。ぜひご覧ください。
Editing and Art Direction:Amanda Ling-Ning Lo
Project Management:Nina Nomura
English Translation:Bonnie Pong-Wai Ma
English Revision:Mark Pearson
White Noise – 中藤毅彦 | shashasha 写々者 – 日本とアジアの写真を世界へ
モノクロームの都市スナップショットを中心に作品を発表し続けている中藤毅彦の7作目の写真集。 今回は中藤が「破壊と再生を繰り返すアメーバの様に変容する怪物」と称する近年の東京をテーマに、独自の視点で切り取ったモノクロームとカラーのイメージが洪水の様に溢れ出す仕掛けがなされており、現在の東京が体現しているめくるめく混沌の世界を写真集そのもので表現している。 …