植田正治写真展 ベス単写真帖 白い風
写真:植田正治
発行:フジフィルム スクエア/コンタクト
発行日:2022/6
判型:A4縦判(297×210mm、リーフレット)、B5横変型判(110×220mm、DM)
製版・印刷:プロセス4C
用紙:アラベール-FS ウルトラホワイト
今回は、フジフィルム スクエア 写真歴史博物館で開催中の植田正治氏の写真展『ベス単写真帖 白い風』のリーフレットなどをご紹介いたします。
今を去る半世紀も昔のこと、私がこの道に入ったころのベス単派と称される一群の人たちの表現技巧は、安物とはいえこのレンズによる独特のソフト描写で、一世を風靡したものであります。ならば、この蒼然たる芸術写真を現代風カラーネガ法による天然色写真に再現したら、いかなるものができるのであろうかというのが発想源で、これがいたくわが好奇心を刺激したことなのであります。
ー植田正治(「ベス単写真帖 白い風」リーフレット」より
植田正治氏は1913年鳥取県西伯郡境町(現境港市)生まれ。中学生の頃、写真に出会い夢中になります。1931年、東京のオリエンタル写真学校入学。卒業後、19歳で郷里に写真館を開業。以降生地を離れることなく、アマチュア精神を貫いた創作活動を続けます。日本光画協会、中国写真家集団、銀龍社などに参加し、コンテストでも多数入選。
砂浜や鳥取砂丘で撮影した、人をオブジェのように配置した砂浜や砂丘での独創的な群像演出作品が一躍注目されます。この鳥取砂丘で撮影された「砂丘シリーズ」は、今日もなお根強い人気を得ています。
1970年代に再評価の機運が内外で高まり、1978年、1983年にアルル国際写真フェスティバルの招待作家としてフランスを訪れています。1978年以降、国内外の多数の賞を受賞しますが、1996年にはフランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエを受賞。フランスでは植田氏のシュルレアリスティックな作品を、日本語のまま「植田調(ueda-cho)」と広く紹介しています。
1995年に鳥取県西伯郡岸本町(現伯耆町)に植田正治美術館が開館。2000年逝去(享年87歳)。
植田氏が写真に傾倒していった大正時代当時、アマチュア写真家たちの間で流行したのが、「ベスト・ポケット・コダック」という単玉レンズ付きカメラ、通称「ベス単」の、レンズフィルターのフードを外して撮影することで得られる独特のソフトフォーカス効果を使った写真です。
〈白い風〉は、それから半世紀後、植田氏がその「ベス単」の撮影手法を改めてカラー写真で蘇らせた、日本の風景シリーズです。撮影には、当時最新のネガカラ―フィルム「フジカラーF-Ⅱ」が使われました。この展覧会では、1981年に日本カメラ社から刊行された写真集『白い風』の入稿原稿として使用された当時の貴重のプリントから、約40点を精選し展示されます。
植田氏はかつてジャン・ウジェーヌ・オーギュスト・アジェ(1857~1927年)の風景写真を例にとり、「吹き抜ける”風”を撮ろう」と語りました。
「風景の風は吹き抜ける風。目に見えない空気の流れでも、画面のなかから感じられるようだとすれば、そんな写真は、風景写真の目標の一つにしてもいいような気がいたします。」と言うように、植田氏の写真から皆さんもさわやかに吹き抜ける風をお感じいただけるのではないでしょうか。
この展覧会は、フジフィルムスクエア 写真歴史博物館にて、9月28日(水)まで開催中です。ぜひお運びください。
担当プリンティングディレクターより
細野 仁
植田氏のソフトフォーカスで淡い色調の作品を印刷するにあたり、あまりフラットな印象にならない塩梅で無理にコントラストをつけず、色の鮮やかさは出しつつも暗部の濃度を上げすぎないように留意して製版いたしました。
モノクロ写真については、下色(シアン、マゼンタ、イエローの3色)を抑え、スミのトーンで階調を出しています。
主催:富士フィルム株式会社
企画協力:コンタクト/植田正治事務所
後援:港区教育委員会
植田正治写真展「べス単写真帖 白い風」 | 写真展・ フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE)
フジフイルム スクエア 写真歴史博物館 企画写真展 2022年6月30日(木)~9月28日(水)(最終日は16:00まで) 写真歴史博物館 SHARE 見どころ 植田正治の青年期、隆盛を極めた芸術写真で流行した日本独自の撮影手法「ベス単(ベストポケット単玉レンズつきカメラ)のフードはずし」。ほぼ半世紀を経て、この技法をカラー写真に取り入れて甦らせた植田の実験精神を垣間見られる作品群。 …