タイポグラフィ・ブギーバック ぼくらの書体クロニクル
著:正木香子
装幀:横須賀拓
写植印字(カバー・帯):駒井靖夫
発行:平凡社
発行日:2023/3/24
判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:256p
製版・印刷:スミ、特色2C(特青+特スミ、特赤+特スミ)、特色1C(特青、特ピンク)、カバー、帯はマットPP加工
用紙:オペラホワイトマックス、チップボールα、エスプリコートFM
製本:あじろ綴じ並製本
今回は、正木香子さん著『タイポグラフィ・ブギーバック ぼくらの書体クロニクル』をご紹介いたします。
文筆家・正木香子さんは、幼いころから活字や写植の書体に魅せられ、〈滋味豊かな書体〉をテーマに各紙誌にエッセイを発表しています。本書は「ウェブ平凡」掲載の同名連載を単行本化したもの。「あの書体でなければ、あの『名作』の数々は生まれなかった(かもしれない)——。」だれもが目にしながら意識されてこなかった文字づかいのマジックが解き明かされています。
文中に登場する謎の暗号のような言葉〈新ゴ〉〈見出ミンMA31〉〈タイポス〉〈ゴナ〉〈ファン蘭〉〈リュウミン〉…これらはすべて書体の名前で、小沢健二の「今夜はブギーバック」、90年代の「週刊少年ジャンプ」、竹宮惠子の少女漫画『風と木の詩』、『ハリーポッター』など、特にアラフォー、アラフィフ世代は馴染み深いものばかりです。
本書では書体が作品に与えた効果を分析しつつ、正木さんの読書の記憶や思い出など個人的経験にも触れた、活字愛、書体愛にあふれた文章が非常に楽しいです。また、写植として多く使用されてきた写研書体が、2024年にOpen Type フォントとして、モリサワからリリースされ復活するというニュースに胸躍らせながらも、書体の名前が残っても別物になってしまっていたらどうしよう、と心配するあたり書体愛ゆえでしょう。
時代と文化を彩ってきた懐かしい書体の数々。皆様もご自身の思い出とともに振り返ってみてはいかがでしょうか。当時は気付かなかった発見がきっとあると思います。ぜひご一読ください。