大山幸子詩句篇 陶子の恋
著:大山幸子
構成・編集・ブックデザイン:滝川淳
発行:東京印書館
発行日:2023/6/1
判型:A5横変型判(136×210mm)
頁数:92p
製版・印刷:プロセス4C、プロセス3C(シアン、マゼンタ、スミ)、カバー・表紙はグロスニス
用紙:里紙 雪、ミセスB-F オフホワイト、ヴァンヌーボVG スノーホワイト、OKミューズガリバーリラ ホワイトS
製本:糸かがり上製本
タイトル『陶子の恋』は少女時代の恋、女学生のときの恋、ふるさとへの恋、草花や樹々の生い茂る山々への恋、遠い異国の海岸で感じた恋など、さまざまな恋がある……俳号・桐山陶子としての恋を表現したところから来ています。夫への恋もありますし、私の家族への恋も、家族の一員の飼い犬たちへの恋もあります。だれもが恋する人生のなかで、私の『陶子の恋』を著したかったのです……。
日常のふとした瞬間の心のときめきを待ち続けることが、これからも「陶子の恋」につながってゆくのではないでしょうか。
—著者あとがきより
大山幸子(俳号・桐山陶子)氏は、1934年旧満州国新京生まれ。60代後半から、女流俳人黛まどか氏主宰の女性限定の俳句結社「月刊ヘップバーン」に参加し、俳句に夢中になります。そこでは、若いエネルギーに満ち溢れた女性たちに囲まれ、恋の句などの創作活動に情熱を注ぎました。その後、作家森村誠一氏が開設者の「写真俳句」をきっかけに、写真と俳句のコラボレーションの面白さに惹かれ、自身のブログ「日常茶飯事」にて、写真と俳句のコラボレーション作品を発表していきます。
この「日常茶飯事」は、2008年当時、NHKの「趣味悠々」の担当者の目に留まり、年配向けのブログ作成を薦める番組で「趣味悠々」のテキストに掲載され、その後NHKの番組に出演する機会もありました。写真についても、本格的に撮りたいと思っていたところ、「写真もあなたの言葉です」のキャッチフレーズに魅了され、「現代写真研究所」の門をたたきました。現在も講師の山本やす子氏に師事しています。
ジャズが好きバーボンが好き生身魂(じゃずがすきばーぼんがすきいきみたま)
ホワイトジーンズパリ行きは午後三時(ほわいとじーんずぱりゆきはごごさんじ)
パンケーキ焼けて囀りこぼれくる(ぱんけーきやけてさえづりこぼれくる)
頬杖の少女の涙花の昼(ほほづゑのせうじよのなみだはなのひる)
大山氏は現在88歳。しかし、この詩句篇に収められた詩や句、写真は、いずれも瑞々しい感性と若いエネルギーにあふれていることに驚かずにはいられません。詩句に添えられた花や植物、メリーゴーランドなどの風景の写真は、淡く、ときには儚くさえも見え、大山氏の持つ「永遠の少女性」を感じさせる世界感を補完しています。自らの審美眼によって貫かれた、ロマンティックな世界に読者を誘ってくれるでしょう。
デジタル大辞泉で「恋」の意味は次のように出ています。① 特定の人に強くひかれること。また、切ないまでに深く思いを寄せること。恋愛。②土地・植物・季節などに思いを寄せること。三省堂国語辞典では、「好きで、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ちを持つこと」とあります。自分の方が、相手を深く強く思っていて、いわば片思いの状態とも言えるでしょう。ただこの「恋焦がれる」「恋する」気持ちを常に忘れないでいられることが、大山氏の作品の最大の魅力と言えるのではないでしょうか。
本書の構成・編集・ブックデザインを担当したのは滝川淳氏。大山氏と何度も対話を重ね、二人の情熱が結実して『陶子の恋』は誕生しました。大山氏は、「滝川氏と出会えなければ、この『陶子の恋』は生まれてこなかった」と語ります。
人生を長く生きてくると、若い頃のようなときめきや、熱中していた夢はおいてけぼりになりがちです。日々の雑事に忙殺されながらも、大山氏のように身の回りの人々や事物に「恋」をしていければ、きっと皆さまの人生にも違った景色が見えてくることでしょう。
(書影・文 東京印書館 大熊美幸)
担当プリンティングディレクターより
髙栁 昇
句と写真には相関関係はないとのことでしたが、全詩句を拝読し、どの詩句にどの写真がレイアウトされているかを考えて、大山さんの乙女のような感受性が引き立つような製版を心掛けました。具体的には、用紙の特性を鑑みながら極力濁りを抑え、透明感を携えつつ柔らかい雰囲気に仕上がるように印刷しています。
統括印刷ディレクション:髙栁昇(東京印書館)
製版ディレクション:山口雅彦(東京印書館)
印刷ディレクション:高橋満弘(東京印書館)
印刷進行:三浦清美(東京印書館)
Special Thanks:山本やす子、高群美子
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発行日: 2023/6/1-判型:A5横変型判 136×210mm-頁数:92 ページ-印刷:プロセス4Cオフセット-製本:糸かがり上製-用紙:ミセスB-F オフホワイト、里紙 雪日常のふとした瞬間の心のときめきを瑞々しい感性で綴った詩句集。淡く時に儚い写真と言葉が紡ぐ甘美な一冊。