東京印書館では、銅版画作家として活動する製版課チームのスタッフ吉澤美樹の作品集「tiny story」を今年刊行予定です(2023年11月20日刊行予定)

吉澤の作品は雁皮紙という薄い和紙に銅版で刷られており、一つ一つの物語が蛇腹折りの手製本で紡がれています。 昨年は、東京印書館の取り組みとして、作品の一つである「曲を解かす」をオフセット印刷で再現、複製を制作しました。

そして、今回刊行する初の作品集「tiny story」はこれまでに吉澤が制作した4つの作品を一冊の本に纏めたものになります。

「tiny story」は2023年11月23日、東京現代美術館で開催されるTOKYO ART BOOK FAIR 2023にて東京印書館のブースで販売する予定です。今回は、本の完成に至るまでの過程について、吉澤自身が複数回にわたってレポートしていきます。

製版課の吉澤です。今回、自身の銅版画作品を纏めた作品集を、今年11月に東京印書館で刊行することになりました。製版から印刷に至るまでの制作過程をレポートしていきたいと思います。

オリジナルの作品は銅版を雁皮紙という薄い和紙に刷ったものをコラージュして制作し、それぞれ異なる大きさの蛇腹本に仕立てていますが、今回は4つの蛇腹本作品を背とじの形(コデックス装)に再構成します。


まずは表紙の制作です。銅版画作品の凹凸を表現するため表紙は箔押を取り入れることにしました。 絵柄のどの部分を箔押しにするか、どの部分をCMYKで表現するか様々な案を検討し、仮制作をしています。そしてカンプを出力し、選んでいきます。

箔押しとCMYKが重なった時、実際どのように見えるかは完成してからでないとわからないため、想像するのが大変難しいです。最終的な出来上がりがどのような形になるのかをを楽しみにしていただけると幸いです。

本文の制作では、元の作品が大小様々な蛇腹本のため構成に苦労しています。どの作品を収録するか、また作品の大小関係が崩れないよう本のサイズを丁寧に選びました。 

ようやく表紙のデザインが完成し、本文のページ数や構成も決まりました。


次は、実際に使用する用紙を使用しオフセット印刷機で本機校正を行います。原本で色鉛筆で彩色した鮮やかな色の部分は通常のCMYKインキでは再現が難しいため、今回は蛍光インキを用いて原本に近い色を再現することになりました。

後日、本機校正の様子もレポートしていきたいと思いますので、ぜひご一読ください。
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2023年9月27日
製版課:吉澤 美樹

時代や人に寄り添い続ける普遍的なストーリー性が魅力のアート作品 – 吉澤美樹「曲を解かす」複製

曲を解かす 吉澤美樹 (複製) 著:吉澤美樹 発行:東京印書館 発行日:2022/10/27 判型:A1変形判