梁丞佑写真集  The Last Cabaret

著:梁丞佑(ヤン・スンウー)

発行:禅フォトギャラリー
発行日:2020/8/25

判型:A4横判(210×297mm)
頁数:144p
製版・印刷:プロセス4C+グロスニス、特色1C(特赤)ダブル+スミ、プロセス4C+特色1C(特赤)ダブル
用紙:ミューコートEX、サンカード+、ユーライト、NTラシャ 濃赤
製本:あじろ綴じ並製本

今回は、写真家・梁丞佑(ヤン・スンウー)氏の写真集『The Last Cabaret』をご紹介いたします。

2016年に禅フォトギャラリーより刊行した写真集『新宿迷子』にて第36回土門拳賞を受賞した梁丞佑氏は、その後も新宿に通い続け、変わりゆく街の姿をカメラにおさめていました。そんな中ふとしたきっかけで歌舞伎町の伝説的なキャバレーのオーナーの知遇を得て、店が閉店するまで約1年の間、そこに集まっては散っていく老若男女の姿を記録した待望の写真集。

私が吉田さんと出会ったのは、1年半ほど前。以前から「ロータリー」の存在は知っており気になってはいたのだが、私には敷居が高くて入れずにいたのだ。ある日、時々撮影させてもらっていたドアマンの高橋さんの写真を撮っていると、高橋さんが「会長がこういうの好きだから、上に上がって」と言ってくれた。うっすら期待はしていたものの、まさかほんとに入れるなんて。

そして、会長の吉田さんに会い、撮影もあっさり許可された。会長は、この世界では伝説と呼ばれており、歌舞伎町で商売をしていて彼を知らない人はいないんじゃないかと言わるほどの人物だ。

いざ中に入ってキャバレー「ロータリー」の中を見渡すと、本当に昭和が色濃い。実際、そこにいる人々には自分のクラスメートばりの親近感がわいた。ホステスの最年長は72歳。そして、なんとここのナンバーワンが彼女だという。なんとも興味深い店だと感じ、通い始めて1年。「あと1ヶ月で店を閉める。」突然の閉店となった。毎月、そろそろ閉めないと、と言っていたが、まだ先だろうと思っていたところだった。

そして閉店直後からコロナウィルスが本格的に流行し、歌舞伎町からも人が消えた。1月の終わりにここまでの状況になることを予測していた人は、そんなにいなかったんじゃないかと思う。もちろん吉田さんも予測したわけではないのだが。この辺りも吉田さんの伝説たる所以かもしれない。跡地には老舗ホストクラブが入る予定になっていたが、白紙となった。何も無くなった240坪の広い敷地は、さながら運動場のようだった。

― 梁丞佑(あとがきより)

昭和の香りが色濃く残るキャバレー「ロータリー」に集う客とホステス、スタッフ、オーナーの吉田さんと、その生きざまや人となりに興味を惹かれる面々の人間模様が克明に写し撮られています。

ヌードダンサーに胸をうずめる客、高齢のホステスと和やかに談笑する高齢の客、たくさんのチップを衣装に挟み華麗に踊るヌードダンサー、巧みに客をあしらう笑顔のホステスたち、てんやわんやの厨房、大量のおしぼりを運ぶスタッフ、自ら裏方の仕事をするオーナーの吉田さん、経理の女性の前の現金、ロッカーからパンストがはみ出しパンプスが転がった控室…

この空間で、客やホステスたちは泡沫の夢を見ていたのではないでしょうか。「ロータリー」閉店の日、別れを惜しむホステスたちの涙と笑顔が印象的です。泣きながら抱き合い、笑顔で記念写真におさまった彼女たちにとって、ここでの仕事は青春だったのかもしれません。

何もなくなったフロア、天井からはがされていくミラーボール、軽トラで運ばれていく彫像…写真集の最初のページの賑やかで華々しい雰囲気は消えていゆき、ただ寂しさが残ります。ここから散らばっていった彼ら、彼女たちは、今頃どうしているのか気になってなりません。人間の内面にフォーカスした素晴らしい写真集です。ぜひご覧ください。

アートディレクション:伊野耕一
英語翻訳:マ ボン ワイ ボニー
英語校正:マーク・ピアソン
進行管理:野村ニナ

The Last Cabaret – 梁丞佑 | shashasha 写々者 – 日本とアジアの写真を世界へ

2016年に禅フォトギャラリーより刊行した写真集『新宿迷子』にて第36回土門拳賞を受賞した梁丞佑は、その後も新宿に通い続け、変わりゆく街の姿をカメラにおさめていた。そんな中ふとしたきっかけで歌舞伎町の伝説的なキャバレーのオーナーの知遇を得て、店が閉店するまで約1年の間、そこに集まっては散っていく老若男女の姿を記録した待望の新刊写真集。 …

梁丞佑/YANG Seung-Woo写真集「The Last Cabaret」印刷の現場から

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