野口哲哉展 this is not a samurai/野口哲哉作品集 ~中世より愛をこめて~
著:野口哲哉
発行:ポーラミュージアム アネックス(フライヤー)/求龍堂(作品集)
発行日:2022/7(フライヤー)/2018/7/13(作品集)
判型:A4縦判(フライヤー、297×210mm)、B5縦変型判(作品集、247×190mm)
頁数:132p(作品集)
製版・印刷:プロセス4C(フライヤー、作品集)、特色1C(特茶、作品集)
用紙:ミセスB-F スーパーホワイト(フライヤー)、b7ナチュラル(I)オペラホワイトゼウス、タント D-54、特菱アート片面N(作品集)
製本:糸かがり上製本
今回ご紹介するのは、ポーラミュージアム アネックスで開催中の展覧会「野口哲哉展 this is not a samurai」フライヤーと、2018年刊行の作品集『中世より愛をこめて』です。野口哲哉さんは武具や甲冑、それらを纏った人間をモチーフに、リアリズムの視点から制作活動を続けている現代美術家。
一般的に私たちが思い描く武士の姿は、高い美意識と精神性を兼ね備えた、どこか遠い存在です。しかし野口さんの作品の中の人物は、現代人に通じる飾らない表情で、時には甲冑とともに、現代のアイテムやモチーフ(スニーカーやショッパー袋、シャネルのロゴなど)を身に着けています。そこには「リアルな甲冑を作る事以前に、リアルな人間の姿を探求したい」という野口の想いが現れています。
「無さそうであるもの」と「ありそうで無いもの」の2つの世界が混在する世界観の中で、私たちは「サムライ」ではなく、より身近な人間の気配や感情を感じるとることができます。野口さんの生み出す甲冑をまとった人々の表情は、ユーモアとペーソスを湛えています。その根底には、野口さんはマニアックな甲冑愛だけにとらわれず、「人間」に対する好奇心があるからです。
また、野口さんは、美術館所蔵の甲冑の修復の補作や作品解説をするほどの豊富な知識を持ち、その卓越した技術によって、甲冑武具の細部や、経年変化による傷みや剥落に至るまでを丹念に作り上げています。リアルとフィクションの間の平行世界を行き来する鑑賞者は、とてもユニークで刺激的な体験を味わうことができるでしょう。
この展覧会は、2022年9月11日(日)まで、ポーラミュージアム アネックスにて開催中です。作品集「中世より愛をこめて」も好評販売中ですので、展覧会と作品集を合わせてお楽しみください。
担当プリンティングディレクターより
細野 仁
小さな侍たちがまとう甲冑にはボリュームをつけすぎず、暗部のディテールを出しつつ立体感を持たせています。絵画作品についても全体的にトーンを揃え、メリハリをつけて製版、印刷いたしました。
【作品集】
協力:ギャラリー玉英・玉屋喜崇、沖田貴一、高田怜美
撮影:竹下聡、野口哲哉
編集・デザイン:清水恭子(求龍堂)
野口哲哉展 ― THIS IS NOT A SAMURAI ―
野口哲哉は、鎧と人間をテーマに現代性や人間性を問いかける現代美術作家です。鎧兜を着た人物が所在なくたたずんでいるかと思えば、リラックスしたり、苦悩したり、時には流行りのスニーカーを履き、ブランドのロゴが描かれた甲冑を自然に着こなすなど、一見すると鎧兜とはアンバランスな、飾らない人の姿をリアルに映し出しています。多様な文化や感情が混ざり合うユニークな世界観は国内外の幅広い層に支持されています。