別冊太陽 森山大道  写真とは記憶である

監修:森山大道写真財団

発行:平凡社
発行日:2022/5/25

判型:A4縦変型判(290×220mm)
頁数:208p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、2C(スミ+特グレー)、5C(プロセス4C+特グレー)、3C(スミ+特グレー+マットニス)
用紙:雷鳥コートN、雷鳥コート、ブランシュ-TZ
製本:あじろ綴じ並製本

今回は「別冊太陽 森山大道 写真とは記憶である」をご紹介いたします。

路上でスナップショットを撮り、革新的な世界を切り開いてきた伝説の写真家の人生とエポックとなる仕事をクロニクルにたどる決定版です。

日本を代表する写真家・森山大道さんは、1938年大阪府池田市出身。高校中退後フリーの商業デザイナーとしてなりますが、写真に魅せられ、細江英公氏の下で約3年間助手を勤めたのち、1964年にフリーのフォトグラファーとして独立します。

1968年に「にっぽん劇場写真帖」を出版。以降、常に第一線で活躍され、国際国立美術館やカルティエ現代美術財団、ウィリアム・クラインとの合同展を行うなど国内外で大規模な展示会が開催されており、ドイツ写真家協会賞など複数の賞を国内外で受賞した、世界的にも高い評価を受けています。

大道さんの写真の特徴として、皆さん真っ先に想起されるのは「アレ・ブレ・ボケ」でしょう。写真の粒子が荒れ、激しくブレ、画像がボケた「アレ・ブレ・ボケ」の写真は、大道さんの代名詞です。

また大道さんは、スタジオなどの室内ではなく、猥雑な街頭を散策しスナップショットを行い、そうして大道さんの興味と欲望の赴くまま撮影された作品は、モノクロではっきりとしたコントラストの強さが特徴で、その力強く濃厚な画面に惹きつけられます。

現在84歳の大道さんですが、今もなお精力的に創作活動を行っており、昨年はドキュメンタリー映画が公開、写真集「森山大道写真集成⑤1960-1982東京工芸大学写大アーカイヴ」が出版、今年もブラジル・サンパウロでの写真展や、写真集「新装版 犬の記憶」「新装版 犬の記憶 終章」の出版が予定されています。

半世紀以上にもおよぶ大道さんの活動の軌跡を、エポックメイキングとなった作品を紹介しながら、1冊にまとめた充実の内容です。また、大道さんが語る盟友・中平卓馬氏や寺山修二氏との思い出や、石内都氏、百々俊二氏、瀬戸正人氏ら錚々たる面々が語る大道さんとの思い出も収録されています。

伝説の編集者・山岸章二氏と西井一夫氏、末井昭氏など、60~70年代のカメラ雑誌業界全盛期を今に知ることのできる資料やコラムも収められています。大道さんと中平卓馬氏、東松照明氏、荒木経惟氏らとのスナップなど、写真好きにはたまらない貴重なショットの数々も掲載。

モノクロの作品についてはスミとマットなグレーのWトーンで、コントラストを上げて、スミを力強くしています。さらに130頁からの「無言劇 パントマイム」では、背景の漆黒面だけにマットニスを加えることで、より艶消し感を出し、写真の光沢感との対比が際立つように製版、印刷しています。

本書は大道さんの入門書としてはもちろん、大道さんの熱烈なファンの方にもご満足いただける、まさに大道さんの写真家人生を網羅した内容です。手前味噌ながら、印刷につきましても、ムックでありながら写真集に引けを取らない出来栄えであると自負しております。大道さんが語る「写真とは記録である」…その真意が本書には詰まっています。多くの方にご覧いただきたい1冊です。

編集:竹内清乃、村上仁一(合同会社PCT)、圓谷真唯(合同会社PCT)
造本設計:町口覚
デザイン:浅田農(マッチアンドカンパニー)