いま読み直したい思想家9人
著者:布施元、久冨峻介、加戸友佳子、大倉茂、小森(井上)達郎、藤本ヨシタカ
発行:梓出版社
発行日:2020/5/20
判型:四六判(188×128mm)
頁数:254p
製版・印刷:スミ、プロセス4C、特色1C(特茶)、スミ+特色1C(特赤)、カバーはマットPP加工
用紙:淡クリームキンマリ、A2マットコート、Y2用紙、b7トラネクスト
製本:あじろ綴じ並製本
今回は、2020年に刊行された『いま読み直したい思想家9人』をご紹介いたします。
本書であつかわれている思想家9人は、フィヒテ、ヘーゲル、マルクス、カッシーラー、三木清、戸坂潤、アーレント、シューマッハー、レイン。彼らの共通点は、「人間と社会について深く悩み考えぬいた、人生の先達たちである」ということです。
彼らの思想は脈々と受け継がれ、時には批判されながらも、執筆者の方々の問題意識を触発し続けている一方で、我々読者が直面する現代の問題との接点を見いだすことができます。古典の名著の中にある、現代に生きる我々を救うヒントを求める「知の共有」と「知の体験」が叶います。
本書はいわゆる入門書ではないのですが、まず各思想家の生涯と著作についての記述があり、各思想家の研究を専門とする執筆者の方々が、思想のテーマに焦点を当てたい部分を簡潔明瞭に論じており、哲学への入り口としても非常にわかりやすい良書です。
例えばドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントは、自身がユダヤ人であり、ナチズムが台頭するドイツからフランスに逃れ、アメリカに亡命。その全体主義を生み出す大衆社会についての分析は特に有名です。
アーレントの思想について、少しだけ本書からご紹介すると、全体主義的な社会下においても、「わたしにはこんなことはできない」と考え、「同調」することを拒み、「なにが起ころうとも、わたしたちは生きるかぎり、自分のうちの自己(ourselves)とともに生きなければならないことを知っている人々」が「思考」する人間たりうるそうです。
ドイツ同様、日本も太平洋戦争時の全体主義を受容した苦い経験がありますが、現代の日本で、アーレントのいう「思考」することができている人間はどのくらいいるのでしょうか。
「哲学」と聞くととっつきにくく、あまり役に立たない学問と思われがちですが、実は、生きていくうえで社会や家族、友人、仕事などさまざまな問題に突き当たったときに解決したり対処したりするヒントを示してくれ、人生を豊かにしてくれるものです。本書を手始めに、こちらで紹介されている各思想家の著作もぜひお読みいただきたいです。