思考の技術論 自分の頭で「正しく考える」
著:鹿島茂
デザイン:松田行正+杉本聖士
発行:平凡社
発行日:2023/3/22
判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:576p
製版・印刷:スミ、スーパーブラック、カバー、帯はマットニス
用紙:オペラクリアマックス、MagカラーN モルタル、NTラシャ グレー30
製本:あじろ綴じ上製本
今回は、鹿島茂氏著『思考の技術論 自分の頭で「正しく考える」』をご紹介いたします。混沌を極める現代社会で「真と偽を区別して正しく判断する」ためにはどうすれば良いのか。仏文学者・鹿島茂氏がデカルトの『方法序説』から考える「正しく考える」ための方法論。
本書で鹿島氏も述べられているように、私たち日本人の多くは日本で小・中・高・大と教育を受けてきていても、学校教育の中で「《考える》ための方法」を教えられたことはありません。「『自分の頭で考えろ』という人はあっても、自分の頭で考える方法をまず教えなければならないという人はあまりいないようです。」
それは日本の教育が、知識を与えることに重きを置いたものであり、知識を与えればおのずと考える力が身に付くと信じられてきたからです。一昔前大学時代に論文を書かれた方のなかには、体裁としての論文の書き方しか教えてもらえず、手探りで進めた方も多かったでしょう。
「自分の頭で正しく考えること」に主眼をおいた本書では、まず全体を通す軸として、デカルトの『方法序説』が取り上げられています。「我思う、故に我あり」で有名なデカルトですが、鹿島氏は「正しく考えるためのデカルト四原則」として、以下を上げています。①すべてを疑おう②分けて考えよう③単純から複雑へ④見落としの可能性を列挙しよう、です。
正しく考えるための基本的な原則は、この4つに帰納します。ベンヤミン、吉本隆明、エマニュエル・トッドなど、さまざまな哲学者や思想家の「正しく考える方法」がサンプリングされており、時には鹿島氏ご本人もサンプルとなって検証が進められています。
全26章、576ページの大ボリュームですが、文章は明快でわかりやすく、サザエさんや星野源など私たちに親しみのある事物を例にとって解説してくださっているので、気負うことなく読み進めることができるのではないでしょうか。ぜひご一読ください。