詩と世界のヴィジョン イギリス・ロマン主義から現代へ

著者:道家英穂

発行:平凡社
発行日:2023/7/19

判型:四六判正寸縦(188×128mm)
頁数:312p
製版・印刷:本文-スミ1色、カバー-プロセス4色+マットニス、表紙-特色1色(緑)、扉-特色1色(緑)
用紙:本文-オペラクリームマックス、カバー-ヴァンヌーボーVGスノーホワイト、表紙-タントL-62、扉-アラベールナチュラル
製本:あじろ綴じ 上製本

人は世界をどのように認識しているのだろうか?

激変する時代の渦中にある時に、新しい世界観、すなわち人の存在の拠り所を示してくれるものはなにか?

本書を読むと、それは”詩”であると分かります。

詩は、詩人の世界観の表明であり、詩人が属する時代において世界や宇宙がどのように認識されていたかを表したものである、と言ったら大げさに聞こえるだろうか。
・・・

(P5 はじめに より)

この本では、著者の道家英穂氏は、イギリス・ロマン主義の時代の詩人たちを取り上げ、彼らの詩のテキストに象徴される意味をたどりつつ、そこに表された世界観と、それが現代にまで与える影響を読み解いてゆきます。

ダンテの『神曲』からワーズワスへ、風景論を土台とした比較を導入部として、コウルリッジの幻想詩「クブラ・カーン」や、サウジー、キーツ、T・S・エリオットらの詩を題材に、著者の思索の道を辿っていくと、壮麗で幻想的な風景、幼年時の記憶と自然景観の融合、失われた楽園や偽りの楽園、戦争による終末の予感など、詩に表現されている世界が、極めて美しく、そしてまた不穏な雰囲気をまといつつ変容してゆく有様に、思わず心を奪われてしまいます。


そして、それらの意味をたんねんに読み解いてゆく様が、まるで探求物語を読むように、とても興味深く、惹き込まれてしまいます。

また、そこに書かれていることは、激動する現代社会にも通じるものがあります。

議論の枝葉の部分も豊かで、目を見張るような驚きがあるのも面白いです。
(地獄の天候についての議論や、本文よりも注釈の方が奇想天外な冒険譚についてなど)

また、この本の巻末には、本文中に取り上げられた詩のテキスト18篇が掲載されているので、今まで読んだことのなかった詩も、すぐに参照できるのがとてもありがたいです。イギリス・ロマン主義の詩の精華としても楽しめると思います。

詩がお好きな方はもちろん、幻想文学や哲学に興味のある方なども、ぜひお手にとっていただきたい労作です。

(文・製版課 岡村)