新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか

著:施井泰平

装幀:菊地信義

発行:平凡社
発行日:2022/9/15

判型:B6縦変型判(172×105mm)
頁数:272p
製版・印刷:スミ、特色1C(鉛色)、特色2C(特青+特墨)、プロセス4C
用紙:淡クリーム琥珀N、Nプレミアムステージ ホワイト、雷鳥コートN
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、施井泰平氏・著『新しいアートのかたち NFTアートは何を変えるか』です。いままさに黎明期を迎えているNFTアートの世界を第一人者と深く考える!経済、芸術、情報・メディアの専門家を迎えた対談も収録。

皆様は「NFTアート」をご存じでしょうか。この本に沿って簡単に説明させていただくと、NFTはNon-Fungible Tokenを略した言葉で、日本語にすると「代替不可能なトークン」の意です。

NFTは仮想通貨で用いられているブロックチェーン技術を利用しており、様々なデジタルデータからたった一つのデジタルデータを特定する、識別子を持っています。また、このブロックチェーン技術によりデータの改ざんができない仕組みを実現し、デジタルデータに高い資産性を見出すことができるようになりました。

このNFTの技術をデジタルアートに反映させたものが「NFTアート」です。これまでの簡単にコピーができてしまうようなデジタルアートとは異なり、NFTアートはブロックチェーン技術によりデータの改ざんを不可能にし、唯一無二のデジタルアートとして価値を保存することができるようになりました。

本書でも引用されたヴァルター・ベンヤミンは『複製技術時代の芸術』において、写真や映画などの複製技術が、伝統的な芸術作品から「アウラ」をはぎとる過程を考察し、芸術と人間の関係がどのように変化したのかを論じました。施井氏は、NFTアートが複製可能なはずのものに唯一性を与えるというのは、つぎの時代における複製技術を超越する「超・複製技術」であり「複製技術の時代」は終わりつつあると言えると語っています。

このNFTアートが、アート業界、あるいは経済や社会にどのような影響をもたらすかについて、さまざまな角度から論考されています。アートに値段がつくとき何が起きているのか、グレーなお金で成り立っていてもあまり表面化することのなかったアート業界のお金の流れも、NFTアートはガラス張りにしていっています。

NFTアートは、今後大きな可能性を秘め新しいアートの一ジャンルとしてまだまだ成長と変化を遂げていきそうです。あらゆる人に対して開かれた「可能性のかたまり」であるNFTアート。「投資してみたいので基礎知識がほしい」「NFTアートがなぜ注目されているかわからない」といった、ベーシックなニーズにも応えた本書。ぜひご一読ください。