国内外で作品が高く評価されている気鋭の写真家、殿村任香さん。今年8月に癌と闘う女性をサポートするポートレート・プロジェクトをスタートしました。ご自身も子宮頸癌を患ったことをきっかけに、女性癌患者に対するイメージを変え、がんを抱える女性が生きやすい世の中を実現すること、検査の大切さを広く認知させることを目的にプロジェクトを始動。
殿村さんは、あくまで写真家としての作品活動としてプロジェクトを位置付けており、これまでに子宮頸癌、乳癌患者の方を撮影、来月も乳癌患者の女性の撮影を予定されています。ご自身の入院中に、癌を抱えながらも女性としての輝きを絶やさない女性の姿に感動し、この輝きを写真家として発信したいという想いからSHINING WOMAN PROJECTと銘打たれています。また、このプロジェクトを通して#cancer beautyという概念を広く認知させるべく、ご自身のSNS等で積極的な作品公開を行っています。
SHINING WOMAN PROJECT account (Instagram)
@shining_woman_project
以下、殿村任香さんのProject Statementとsummaryを転載〜
SHINING WOMAN PROJECT
Hideka Tonomura
「6月25日
病院へ向かう。
この道を泣きながら何度歩いただろう。
病理結果は子宮頸部上皮内癌。
出血しているのに何軒も病院に行ったのに
癌を見つけてもらえなかった女性 。
中度異形成だったのに、リンパにまで転移していた女性 。
転移後、抗がん剤治療を拒否した女性 。
術後の合併症、後遺症に苦しむ女性。
偏見による言葉の暴力で、自殺未遂した女性。
どれほどの人の黒さを見た事でしょうか。
どれほど本当に大切な人が見えた事でしょうか。
女性達の声を私は忘れない。
女性達はまだ闘っている。
勝ち負けのない闘い。
女性性は臓器で決められるものではない。
心に女性が生きている限り、女性性は失われない!!!!!
自身が病気になった人、家族が病気になった人、大切な人が病気になった人。闘う人達の祈りのような気持ちが、
どうか守られますように。」
私は婦人科病棟に入院しました。
当たり前ですが、入院されている方は全て女性です。
それぞれの病気を抱えながらも、女性はお洒落を忘れず、口紅をひいていました。
命を、女性性を輝かせていました。
私はその輝きに心から感動しました。
この輝きを伝えたい、残したい、発信したいと思いました。
また、検診の大切さも伝えていきたいと考え、この度闘う女性のポートレート撮影のプロジェクトを開始致しました。
私が出来ることは写真で発信していくことです。
作品として公開を前提としたプロジェクトです。出版、展示などの展開の可能性があります。
写真はモノクロです。
「撮られるということは、傷と病気を受け入れること」
ある女性からの言葉です。
私はこの言葉を撮影者として心に刻み、出張し撮影させて頂きます。
(撮影はお顔のみ、お体、傷跡のみなどご希望に添います。私の母は胃癌手術の傷跡を残したいと、顔と上半身のみ撮影。この様にご希望頂ければと思います。)
SHINING WOMAN
#cancerbeauty
女性にとって、子宮、乳房、髪を失う事は深い深い悲しみです。
絶望と発狂。
出産を夢みる若い女性。
不妊治療をしている女性。
癌になり、子宮、乳房を失うと同時に、自分の子どもを産むという夢までもを失う。
女性のシンボルを失う恐怖と向き合う事は、女性性への死を予感させる。
その恐怖を受け入れる事との、地獄の対話。
それでも女性達は、口紅をひき、素敵なお洋服を身に纏い、ウィッグを着用し、戦場である、外界に出ていく。
言葉の暴力と偏見。
無意識とは本当に恐ろしいもの。
卑劣な言葉に対し、人を憎んでしまう事への失望。
でも、私も同様に卑劣な言葉を無意識に使っているかもしれない。
同じ女性として、自分にも起こりうる事。
そして、男性も大切な人に起こりうる事。
女性疾患だけでなく、癌患者に対する概念を変えたい。
女性達が生きやすくなる世の中になって欲しい。
変わらぬ大切な日常として、外界に出れるよう。
乳房、子宮、髪を失っても言葉の暴力に合わぬよう。
女性性は臓器によって、決められるものではない。
女性はいつだって、どんな絶望でも受け入れ、美しくいる事の強さがある。
輝くという本当の意味を知っている。
命と闘える力がある。
子供の成長を見届ける事が夢だという女性。
大人になって恋愛する事が夢だという女性。
Life is beautiful.
Anytime,
Anywhere,
Any case.
命の芯はいつだって美しい。
女性達は輝いている。
私はその輝きを撮り続ける。
ーHideka Tonomura
殿村任香
Hideka Tonomura(殿村任香) profile
|写真家。1979年生まれ。大阪ビジュアルアーツ放送・映像学科卒業後、2002年より写真を撮り始める。 2008年、自身の家族の日常を赤裸々に撮った「母恋 ハハ・ラブ」を赤々舎より出版。鮮烈にデビューし、世間に重い衝撃を 与えた。2013年には、新宿歌舞伎町でホステスとして夜の人々と生きながら撮った「ゼィコードゥミーユカリ」をZen Foto Galleryより出版し発表した。近年の著作に「die of love」(2018年、Zen Foto Gallery)と「cheki」(2018年、Morel Books London) がある。また、国内のみならず海外での活躍も目覚ましく、2015年にはパリのルーヴル美術館カルーゼル・デュ・ルーヴルにて開催された「Foto Fever Paris」展、2018年5月にはロンドンのDaiwa Foundation Japan House Galleryにて開催された 「Double Method」展などに参加している。
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