森山大道写真集成⑤ 1960-1982 東京工芸大学 写大ギャラリー アーカイヴ

写真:森山大道

編集:神林豊・町口覚

発行:月曜社
発行日:2021/3/31

判型:A4縦変型判(302×222mm)
頁数:736p
製版・印刷:スミ+特グレー、スミ―+特グレー2種、スミ+特グレー2種+特茶、スミ+特銀、光沢ニス、シルクスクリーン
用紙:OKピクシード01、わたがみ 雪、NTラシャ 漆黒
製本:糸かがり上製本、クロス装

今回ご紹介するのは、2021年刊行、『森山大道写真集成⑤ 1960-1982 東京工芸大学 写大ギャラリー アーカイヴ』です。

東京工芸大学芸術学部 写大ギャラリーが所蔵する1960年から1982年に撮影された930点にも及ぶプリントが掲載された、森山大道氏の初期作品を辿る作品集。

『にっぽん劇場写真帖』を含め、写真史を塗りかえた傑作たちを新生させる決定版シリーズの完結作であり、雑誌や写真集には掲載されていない未発表作も多く含まれた貴重なアーカイヴとなっています。写真家自身による当時の回想、撮影にまつわるエピソード、撮影場所など、貴重なコメントを付し、資料的な側面も充実。

ぼくが写したものでいま残っているもっとも古い写真、一等古い撮影である1960年の、写真に足を踏み入れた頃の、夜の大阪を写したスナップから、以降20年間の時を経て、1982年に出版された『光と影』に至る写真が、この本には収められている。

このアーカイヴの過半は、1976年、ぼくの写真の師である細江英公先生の目と手を通して、工芸大で展示されたプリントである。そして1999年にサンフランシスコの美術館から始まった、ぼくの本格的な数々の海外展で、主要な展示作品となっていった。

1961年、ぼくが大阪から上京して細江先生の最初のアシスタントとなり、それ以降辿ることになった長い長い写真の道すじには、陰に日向に細江先生がより添ってくださっている。

この写真集制作中に、ぼくは幾度となく、ぼくが写し、細片化してしまったあらゆる事象、つまり様々な場所、時間、情景、そこに当る光と影との再会の時間を持つことができた。細片となったイメージたちは、あれこれの時・空が混然と錯綜して視界に映り、新鮮に感覚されてくる。

決して懐かしいという心情などではなく、もうひとつの時・空となって、それを見るぼくに、さまざまなことを知らしめてくれる。

細江先生とめぐり会って以来60年、写真という二文字が持つ魅力は、しぶとくしたたかな引力とともにぼくを摑えて離さなかった。

― 2021年2月 森山大道 (森山大道写真集成⑤ より)

ここまで大道氏の初期作品を、時系列を追って網羅し紹介している写真集は類を見ず、大道氏を愛するすべての方々にとっては堪らない一冊でしょう。造本家・町口覚氏の渾身のディレクションと、弊社プリンティングディレクター髙栁との素晴らしいコラボレーションが叶った本写真集、ぜひ皆様にご覧いただきたいです。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

今回、1960年から1982年「光と影」シリーズまでの930点にも及ぶ膨大な森山大道先生の作品の印刷にあたり、スミと3種類のグレーに特茶版を組み合わせた製版設計を行いました。

収録作品は1960年代から1976年に撮影されたヴィンテージプリント900点と2000年代にプリントが制作されたモダンプリント30点に大別されます。多様なコンディションと階調・色調を持つヴィンテージプリントに対し、モダンプリントの方は「森山大道写真集成② 光と影」(月曜社刊)と同様、比較的コンディションの良いモノクロプリント作品となっております。

まずは50点余りのモノクロプリントを選択。テスト製版・本機校正を行い、モノクロプリントの作品と比較しながら2種類のグレーと黄変部分を印刷する特色インキ(特茶)を調肉いたしました。

見返しについては、白黒を反転させたネガ版をコントラスト強めに製版し、真っ黒い紙にスミとシルバーを8:2の割合で調合した特練りインキで印刷。さらに、その上から同じ版を使用してスミインキを重ね刷りしています。墨インキが半透明インキであることから、光の当て方により先刷りの銀版の見え方が変わるという特異な効果が現れる結果となりました。

スミ+ウォームグレーに特茶を加えた本文部分は、経年により黄変したヴィンテージプリントの風合いを再現しています。

一方、2000年代に作成された30点のモダンプリントについてはヴィンテージプリント群との差別化するべく、スミ+クールグレー+硬調スミのトリプルトーンを採用。よりコントラスト強めの仕上がりとなっております。

作品の年代を遡るほど、粒子感は荒く、時折ピンホールのような傷や汚れも見られましたが、造本家の町口氏との入念な打ち合わせの末、作品のイメージを損なわぬよう大幅な修整は施さず、当時の大道氏の作品の味として活かしています。

 

編集協力:東京工芸大学芸術学部 写大ギャラリー運営委員会、吉野弘章、深尾美希子
翻訳:アンドレアス・ステュルマン
造本設計:町口覚
デザイン:浅田農(マッチアンドカンパニー)
印刷:東京印書館、誠晃印刷、プロセスコバヤシ
製本:ブロケード
協力:木村一也、森山想平(森山大道写真財団)

森山大道写真集成⑤ 1960─1982 東京工芸大学 写大ギャラリー アーカイヴ – 森山大道 | shashasha 写々者 – 日本とアジアの写真を世界へ

この写真集制作中に、 ぼくは幾度となく、ぼくが写し、細片化してしまったあらゆる事象、 つまり様々な場所、時間、情景、 そこに当る光と影との再会の時間を持つことができた。 東京工芸大学芸術学部 …

DAIDO MORIYAMA/森山大道写真集成(5)1960 − 1982 東京工芸大学写大ギャラリーアーカイヴ制作記録The making of Shadai Gallery Archive 1/2

今年刊行された「森山大道写真集成⑤ 1960 − 1982 東京工芸大学 写大ギャラリーアーカイヴ」(月曜社)〜印刷の現場からお届けする制作時の記録映像です。プリンティングディレクター高栁昇と造本設計を担当する町口覚さんとの詳細な打ち合わせシーン、東京印書館/誠晃印刷での印刷風景をご覧頂けます。 後半(2/2) https://youtu.be/juz34C2O-wg This is The making of TOKYO POLYTECHNIC UNIVERSITY Shadai Gallery Daido Moriyama Archive 1960 − 1982 published buy Getsuyosha. The movie is mainly focusing on the pre-press reproduction and printing of the book, with dialogue by printing director Noboru Takayanagi and Art director/book designer Satoshi Machiguchi.

森山大道写真集成(5)1960 − 1982 東京工芸大学写大ギャラリーアーカイヴ制作記録The making of Shadai Gallery Archive 2/2

「森山大道写真集成⑤ 1960 − 1982 東京工芸大学 写大ギャラリーアーカイヴ」(月曜社)制作記録映像の後半です。「光と影」の印刷を巡る対話〜東京印書館/誠晃印刷での調肉・印刷風景。 The second half of the making of “Daido Moriyama’s Photo Collection 5: 1960 – 1982 Tokyo Polytechnic University Shadai Gallery Archive” (Gekyosha).The footage were filmed at TOKYO INSHOKAN and SEIKO Printing.