高橋美保写真集 MINDSCAPE in the woods 武蔵野・狭山丘陵
著:高橋美保
編集・構成:尾辻弥寿雄
英文訳:㈱バイリンガルグループ 翻訳者:Jeremy Richman
デザイン:富樫茂美
発行:現代写真研究所出版局
発行日:2023/2/15
判型:AB縦判(257×210mm)
頁数:112p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、カバー、表紙はグロスニス
用紙:b7トラネクスト、タントN-63、ヴァンヌーボF-FS ホワイト、ヴァンヌーボVG スノーホワイト、クラシコトレーシング-FS
製本:無線綴じPUR製本
今回ご紹介するのは、写真家・高橋美保氏の写真集『MINDSCAPE in the woods』です。
古来、豊かな自然に恵まれた日本では、自然の中で遊び生活してきて、自然の美しさや厳しさを体感し、終生、日本人には自然に対するノスタルジーという本能的感情がある。その感情が私たちの社会を健全にし、新たにしていく原動力となる。しかしそれが個々の人の経験や思いであっても、複数人で成り立つコミュニティー(集団)の記録にならないと、やがては忘れ去られていく。
今や世の中の動きが加速して、何が起こっても驚くことはない。しかし確かな記録(ドキュメント)として残した記憶は時代によっても変わりえないものである。
ー本文4ページより抜粋
この写真集は、2015年から2022年までの約8年間、武蔵野台地の西北にある狭山丘陵で撮影された記録(ドキュメント)です。周囲およそ30キロ、高さは最高でも200m弱のこの台地は、風雨に浸食され、細かい山襞や斜面から滲み出る雨水と湧水によって谷戸が点在し、複雑な地形になっています。
太古は原生林でしたが、人間による伐採が進み、コナラ、クヌギ、クリなどの人工林が育てられました。周囲と孤立しているため、古来種の生物も残っており、多様な生態系が見られるそうです。高橋氏は、この場所でワクワクする数多くの自然のドラマを目にしてきました。
高橋氏は、狭山丘陵をテーマに自然の写真を撮ってきましたが、すべての対象物が自然の歓び・美しさと共に、その反面、存在する恐怖・苦痛といった「感情」を持っていると感じるとともに、ご自身も同様の感情を持たれたそうです。
また、撮影中「自然は失われていく景観が再生する芽をすでに準備している」ことがわかって楽しくなり、過去の風景を想像しながら現在に風景を目にすると、記憶・夢想にいざなわれて、時空を超えた「心の風景」が立ち上がってくるとおっしゃっています。
〈生と死〉の循環を繰り返す自然を感じ取りながら、自然のもたらす〈メメント・モリ〉の気配を表現することを目指した写真集です。この循環する自然の摂理をお感じいただきたいと思います。ぜひご覧ください。