MASSOUD マスード 

Photograph & Texts:長倉洋海

Preface:アフマド・マスード

発行:長倉商店塾
発行日:2021/7

判型:AB横変型判(270×280mm)
頁数:216p
製版・印刷:プロセス4C
用紙:ヴァンヌーボVG ホワイト、羊皮紙 雪
製本:糸かがり角背ホローバック上製本、箔押し

今回ご紹介するのは、長倉洋海氏が長年親交のあった”アフガニスタンの英雄”アフマド・マスードを撮影した写真集『MASSOUD』です。

2020年末、マスード財団から「アフガニスタンの若い世代にマスードを知ってもらうために写真集を作りたい」という要望を受けた長倉氏は、これを快諾。ペルシャ語と英語を併記した写真集製作を始めますが、その過程で、マスードに心を寄せていた日本の人々にもぜひこの写真集を届けたいとの思いが膨らみ、日本語版製作を決意されたそうです。

「生きるということは、自分の思想のために闘うことです」ーマスード(本文176ページより)

マスード(本名:アフマド・シャー、同志名「マスード」は「幸運なる者」の意)は、1979年のソビエト連邦のアフガニスタン侵攻後は反ソ連軍ゲリラの司令官となり、ソ連軍にしばしば大きな打撃を与え、「パンシールの獅子」と呼ばれました。1988年5月よりソ連軍のアフガニスタンからの撤退が開始されると、マスードはソ連軍捕虜を自発的に解放し、ソ連軍の撤退を妨害しないことを約束しました。

1992年、ラッバーニー政権が誕生すると、そのもとで国防相、政府軍司令官を務めました。政権崩壊後は、長年続くアフガニスタン内戦において、北部同盟の中枢人物として活躍し、タリバンとの戦いを指導していきます。

敬虔なイスラム教徒で、コーランの教えに忠実なマスードの人柄は、不正を許すことなく、北部同盟の人々からの信頼も厚かったそうです。戦士に殴られたと訴えるバス運転手がいれば、戦士を呼びつけて運転手の面前で殴り、許しを請うたそうです。あるいは、敵勢力に夫を殺されたので復讐したいと訴える母子には、「復讐では解決しない。殺戮が繰り返されるだけだ。それよりもこの子を学校に行かせなさい」と諭したそうです。

アフガニスタンの平和を追い求め、すべての子どもたちが学校に通えるような未来のために戦ったマスードの姿が、この写真集には余すことなく収められています。17年の長きにわたり、親交を深めてきた長倉氏でなければ撮影できなかったであろう表情を、たくさん見ることができるでしょう。

同志たちとのリラックスした食事風景、静かに大好きな読書を楽しむ憩いの時間、仲間と語らうときの屈託のない笑顔、そして時折遠くを見つめている彼の瞳には、どのようなアフガニスタンの未来が映っていたのでしょうか。長倉氏は、その思案しているような彼の表情が好きだったそうです。

2001年9月9日、自爆テロにより、マスードはその命を絶たれました。しかし、彼の志は、息子のアフマド・マスードたちによって受け継がれています。また、長倉氏は「アフガニスタン 山の学校支援の会」を立ち上げ、20余年にわたるアフガニスタンでの取材活動を通して出会ったパンシール渓谷ポーランデ地区の子どもたちの教育支援活動を行っています。

残念ながら、この写真集は限定350部のみ製作され、2022年8月現在は完売となっています。しかしながら、廉価版の製作も検討中とのことですので、その機会にはぜひ皆様にご覧いただきたいです。

Translation:テイラー尚子
Persian Translation:アリ・マイサム・ナザリー
Edit(English):森桂子
Book Design:鈴木康彦

Special Thanks to:マスード財団、安井浩美、サビ・マハディ、長倉商店塾を応援する会、アフガニスタン山の学校支援の会、山口郁子、天野みか