黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮
著:髙田正子
発行:深夜叢書社
発行日:2022/8/10
装丁:髙林昭太
判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:528p
製版・印刷:スミ、特色2C(さびしゅ+特墨)、特色1C(特茶)+プロセススミ
用紙:オペラクリアマックス、OKフロート ぶどう、新だん紙 雪、新だん紙 あい、玉しき みずたま 白、新局紙 白
製本:糸かがり上製本、箔押し、丸背ホローバック、題箋貼り
今回は、髙田正子氏著『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』をご紹介いたします。
遊行する精神、その句業の全軌跡。杏子のエッセイや先達の名句を自在に抽きながら、テーマ別に杏子俳句の背景を探索し、作品の魅力を緻密に、そしてスリリングに読み解く。
ー帯紹介文より
黒田杏子(くろだ・ももこ)氏は俳人、エッセイスト。日経俳壇ほか、全国各地の俳句大会でも選者を務められています。師・山口青邨没後の1990年からは結社藍生(あおい)を主宰して現代の俳句界を牽引しています。
髙田正子氏は、藍生の同人で黒田杏子氏を師と仰いでいらっしゃいます。本書は主に季語に主題に据え、句集やエッセイを紐解きながら、その季語で詠まれた句を蒐集し、髙田氏ならではの視点で考察・分類しています。
「第Ⅱ章 黒田杏子の〈櫻〉」では、「花を待つ」「花の闇」という歳時記には立項されていない季語、黒田氏独自の俳句表現について着目。「初花」や「夜桜」という類似の季語で詠まれた他の俳人の現代俳句の意図を検討した上で、「花を待つ」や「花の闇」は黒田氏の生き方や考え方が示された詠みぶりの哲学的な季語になっていると考察しています。
働いて睡りて(ねむりて)ふたり花を待つ
花の闇お四國の闇我の闇
また「父」「母」「ふたり」という家族に関連するキーワードも俎上にあがり、両親や夫への思慕を詠った句を、黒田氏のエッセイを参照しながら分析していきます。
「一切忖度をせずに書いてください。」という師の言葉を胸に、師の作品を辿った本書。足掛け4年の歳月をかけて書かれた本書は、現代俳句界を牽引する二人の俳人の、素晴らしい師弟関係の賜物と言えるでしょう。ぜひご一読ください。