公文健太郎写真集 暦川

著:公文健太郎

装幀:伊勢功治
協力:テレビ岩手、企作工舎、映像制作Y.M.O
地図製作:丸山図芸社

発行:平凡社
発行日:2019/9/18

判型:A4横変型判(222×260mm)
頁数:160p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、カバー、帯はマットニス
用紙:ニューエイジ、b7トラネクスト、タント N-9
製本:糸かがり上製本

今回ご紹介するのは、写真家・公文健太郎氏の写真集『暦川』です。日本の原風景や農業を撮り注目を集める気鋭の写真家・公文氏が、東北を代表する大河・北上川を源流から河口まで活写。四季の川の豊かな表情と、人々の多彩な営みが浮かび上がります。

古くから人々は水を求め、川辺に集ってきたこと。
鮭をはじめとした川の命を享受してきたこと。
川は土地を肥やし、その土地の上に作物がつくられてきたこと。
流れを利用し物を運び、文化が栄えてきたこと。

そして、時に荒れ狂う川を統べるために堰を築き、流れを変え、共に生きてきたこと。
川は人に憩いの時間を与えてきたこと。
川はまさにこの土地に生きる人々の血液のように営みに欠かせないものであった。

ーあとがきより

北上川は、岩手県中央部を北から南に流れ、宮城県東部の石巻市で追波湾に注ぐ、東北を代表する広大な川です。源流から河口まで250㎞の四季折々の風景、人々の営みが収められています。

東日本大震災によって流されたものに思いを巡らせ、8年の歳月を経て再び被災地に赴いた公文氏が目にした光景は、脈々と受け継がれてきた川辺の人々の暮らしと、豊饒を生み出す北上川の雄大さでした。

大きな悲しみを乗り越えた人々は変わらずこの地で暮らし、野菜を作り、魚を釣り、商店を営み、川辺で憩い、平穏な生活を取り戻しているように見えます。全体を通してアンダーに撮影された公文氏の写真によって、人間本来の逞しさが、雄大に流れる北上川の姿とリンクしていきます。力強い生命力が漲り、見る者を静かに勇気づける写真集です。ぜひご覧ください。