帰郷ノート/植民地主義論
著:エメ・セゼール
訳:砂野幸稔
発行:平凡社
発行日:2004/5/7
DTP:平凡社制作
装幀:中垣信夫
判型:A6縦変型判(160×110mm)
頁数:352p
製版・印刷:プロセス4C、特色1C(特グレー)、スミ、カバーはマットPP加工
用紙:HL用紙(オペラクリームHO)、ヴァル、雷鳥コートN
製本:あじろ綴じ並製本
今回は、黒人詩人エメ・セゼール著、砂野幸稔氏訳『帰郷ノート/植民地主義論』をご紹介いたします。
アルジェリア独立運動で指導者的役割を果たした思想家ファノンや、マルティニックの作家・詩人グリッサンの師であり、カリブ海地域で生まれ育ったクレオール世代の偉大な父であるセゼール。ブルトンが熱讃した真の黒人詩人がたたきつける、反植民地主義の熱い叫び。ネグリチュード(※)の聖典。解説は真島一郎氏。
※ネグリチュード(黒人性)…黒人の自覚を促す標語、あるいは精神的風土や文化の特質をさす語。おもにフランス領アンティルとフランス語圏アフリカで発祥した文学運動の名称。
本書は仏領マルティニックの黒人詩人の代表作であり、ネグリチュードに至るまでの意識発展のドラマである「帰郷ノート」と、西欧批判の「植民地主義論」に加え、ブルトンによる序文を一冊にまとめたものです。1997年刊の再刊。
セゼールは1913年西インド諸島のフランス領マルティニック島に生まれ、18歳でパリに渡り、高等師範学校に学びます。セネガルのL.S.サンゴールと出会い、1930年代、フランス植民地主義の同化政策を批判し、黒人存在の文化的・政治的尊厳回復を訴える「ネグリチュード」の思想を生み出しました。
ネグリチュードに到るまでの意識発展のドラマである『帰郷ノート』が、ブルトンらシュルレアリストたちに絶賛されただけでなく、『植民地主義論』等による西欧批判と、解放の思想を追求する詩、戯曲等は、現在も世界中で読みつがれています。1946年から93年までマルティニック選出フランス国民議会議員、2001年までフォール・ド・フランス市長を務め、政治家としても半世紀にわたってマルティニックを率いました。
文学者として反植民地主義の理想を追い求めた詩と、白人支配の植民地主義の欺瞞を突いた思想論、砂野氏による素晴らしい評論が一冊にまとめられた良書です。ぜひご一読ください。