髙﨑紗弥香写真集 巡礼 JUNREI
著:髙﨑紗弥香
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
協力:小川眞智子(PHOTO MUSEUM 沈黙の海へ works by Sayaka Takahashi 館長)、田村燿子(GALLERY エクリュの森)
発行:月曜社
発行日:2023/5/10
判型:A4縦変型判(291×220mm)
頁数:188p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、帯はマットPP加工、箔押し
用紙:b7ナチュラル、ネオウーブン NLD18、MTA+-FS、
製本:糸かがり上製本
今回は写真家・髙﨑紗弥香氏の写真集『巡礼 JUNREI』をご紹介いたします。12年のときを巡る山上のみずうみを撮りついだ映像群。『沈黙の海へ』につづく第二作品集です。
髙﨑は、『巡礼』を構成する水辺の風景に対して、毎年変わらず清らかに流れる水を見続ける内に、特別な「静けさ」を感じるようになったという。その風景を12年にわたって撮影し続けたことで、「静けさ」はさらに深まり、向かい合う彼女自身の純度も高められたのだ。[……]同じ山の二つの池を特別な場所と感じ、繰り返し撮り続けることが髙﨑にとっての「巡礼」であり、それが、聖なる領域にもつながる、闇と光の物語をつくり出している。
—篠原誠司氏解説より
高﨑紗弥香氏は東京都生まれ。2005年、法政大学社会学部社会政策科学科卒業。長野と岐阜にまたがる御嶽山の山小屋で、初夏から晩秋にかけて12年間働きながら暮らし、制作活動を続けられています。本書は、御嶽山の中で、髙﨑氏が撮影を行ってきた二つの池の風景を厳選して収められたものとなります。
2016年に刊行した最初の写真集『沈黙の海へ』(アダチプレス)は、日本海から太平洋を縦断する43日間の単独行において撮影されました。新潟・親不知の海抜ゼロメートルを起点に、北アルプスから乗鞍岳、御嶽山、中央アルプス、南アルプス、最終地点の静岡・駿河湾へ至る43日間。日本の自然でありながら、まったく未知の場所に降り立ったかのような印象の写真、その静謐な世界観に新鮮な驚きをおぼえた方も多かったのではないでしょうか。
『巡礼』においても、その静謐な世界観はより研ぎ澄まされ、髙﨑氏が語る「静けさ」という概念が作品の核心となっています。その「静けさ」とは、ただ無音であるということではなく、自分が目の前の景色と感応することで、一瞬で心が澄み満たされるような「何か」なのだ、と言います。篠原誠司氏の解説にもあるように、12年にわたり水辺の風景を撮影し続けたことで、「静けさ」はさらに深まり、向かい合う髙﨑氏自身の純度が高められました。
御嶽山の二つの池を繰り返し撮影し続けたこれらの写真は、闇から仄かに発光する水面、それは徐々に明るさを増し、やがて水面に浮かぶ氷によって覆われ、最後にはさざ波がきらめく水面の光へと収斂されていきます。一冊を通して闇から光、そしてまた闇へとつながる、「静けさ」に満ちた闇と光の物語をお感じいただけるでしょう。ぜひご覧ください。
担当プリンティングディレクターより
髙栁 昇
撮影地の凛とした厳しさ、静寂さ、表情を読者の方にお伝えするべく、臨場感を出すよう製版いたしました。最暗部はリッチブラックで締め、明部のデリケートな階調を出しています。印刷時にもできる限りインキを盛り込み、最暗部はさらに引き締まった印象に仕上げました。