深堀隆介作品集 平成しんちう屋
著者:深堀隆介
発行日:2018/7/30
発行:求龍堂
判型:B5縦変型判(257×188mm)
頁数:200頁
用紙:b7トラネクスト、ホワイトニューVマット、NTラシャ 濃赤、Mr.B スーパーホワイト
製版・印刷:プロセス4C(本文、帯、カバーはグロスニス)、スミ(表紙)
製本:あじろ綴じ並製本
今回ご紹介するのは、求龍堂様より刊行されました「深堀隆介作品集 平成しんちう屋」です。
「金魚絵師」深堀隆介さんは、樹脂の上にアクリル絵の具で金魚を描き、それを何層にも繰り返し重ねることで、立体感のあるリアリティを表現する作家です。深堀さんが生み出したこの卓越した技法は積層絵画(2.5Dペインティング)というもので、国内外で高い評価を受けています。
この作品集は、2018年に平塚市美術館と刈谷美術館で開催された、ご自身初の公立美術館での展覧会「金魚絵師 深堀隆介展 平成しんちう屋」を記念して出版されたものです。
展覧会では、今まで作ってこなかった新しい金魚の世界、新作インスタレーション《平成しんちう屋》を発表。その一連の作品も、本書に収録されています。
「美術をやめようと思ったときに、以前から部屋にいた真っ赤な金魚が目に留まり、筆を走らせたら止まらなくなった。」描くことの喜びを思い出させてくれたこの出来事を「金魚救い」といって大切にしている深堀さん。
深堀さんは「金魚絵師」として、金魚という、人工的に作られ、自然界では生きていかれない、虚ろを抱えた生き物(深堀さんがいうところの幽体、魂)に、自分自身を投影し、命を吹き込み続けています。
その作品は、リアルな金魚が目の前の水の中を泳いでいるかのような錯覚に陥るほどの超絶技巧です。しかし深堀さんの作品に登場する金魚はこの世に存在しない架空の品種で、実際の金魚を見ずに描いています。
この「実際には存在しない金魚」(幻想)が「そこに本当に泳いでいる光景」(リアル)を前にした時、私たちもそのはざまを行きつ戻りつ揺蕩う不思議な感覚に襲われます。そこが深堀さんの「金魚」が私たちを魅了してやまない、最大の理由ではないでしょうか。
この展覧会開催に際し、深堀さんは「金魚絵師」と名乗る覚悟を決めたそうです。今後もスーパーリアルでありながら、この世に存在しない「幽体」の金魚たちを描き続け、その作品は私たちの心を惹きつけて離さないでしょう。
スーパーリアルな金魚が描かれた作品の陰影の調子を出し、特に金魚の赤い色と立体感にこだわって、b7トラネクストの用紙適性に合わせ、製版、印刷しています。
ぜひ、この作品集をご覧いただき、皆様も幻想とリアルのはざまを行き交う不思議な感覚を味わっていただきたいです。
撮影:加藤健、SAKI WATANABE、深堀隆介
翻訳:Geoffrey Trousselot(株式会社リベル)、Harusa
編集協力:土方明司(平塚市美術館)、石丸郁乃(平塚市美術館)、松本育子(刈谷市美術館)
ブックデザイン:加藤賢策・和田真季(LABORATORIES)
編集:深谷路子(求龍堂)