科学技術の軍事利用

著:橳島次郎

装幀:菊地信義

発行:平凡社
発行日:2023/7/14

判型:B6縦変型判(172×105mm)
頁数:208p
製版・印刷:スミ、特色2C(特青+特スミ)、特色1C(鉛色)、特色1C(特緑)+スミ、カバーはマットPP加工
用紙:淡クリーム琥珀N、雷鳥コートN、Nプレミアムステージ ホワイト
製本:あじろ綴じ並製本

『科学技術の軍事利用』をご紹介いたします。
作者の橳島次郎(ぬでしま じろう)さんは生命倫理、科学技術文明論がご専門です。まずは、科学・技術と戦争がどのように結びついてきたのか歴史をたどります。古くから国家主導で科学者・技術者を集め研究機関を設立した例(アレクサンドロス大王)や、科学者自らが研究費を捻出するために科学知識の軍事転用を売り込んだ例(ガリレオ・ガリレイ)など。ただ古代の科学者のなかにも少ないながら、知識を軍事利用に提供することに対し悩んだひとがいたようです。

その葛藤は現代までひきつがれています。特に民生目的の研究の成果が軍事に転用されることに対して、現代の科学者たちはどう対応していくべきでしょうか。作者や、他の生命倫理学者の意見が紹介され、各国の科学者たちが実際にどのように対応しているのか例をあげて示します。

さらに、科学・技術の発展がもたらした最先端の問題を考えていきます。
・人工知能兵器はどこまで許されるか
・兵士の心身の強化改造の是非
・軍による人体実験の現在と課題最先端技術がなにを可能にし、その結果どのような問題が生じるのかを丁寧に解説していきます。例えば、フランスはなにを理由に完全自立致死兵器の製造、使用を認めないのか。自立兵器システムと、兵士の強化改造の同時進行が何をもたらす可能性があるかなど、興味が尽きません。それらの問題について国際的な提言や条約、各国の法律や研究機関によるガイドラインなどを多数紹介して、「越えてはならない線」が現状どこにあるのかを提示します。しかし、「越えてはならない線」を引くことを専門家だけにまかせてよいのでしょうか。作者は、広く一般の人々がこれらの問題の議論に加わることが不可欠であると繰り返し説きます。一般市民が「越えてはならない線」に目を背けず関わっていくための手がかりとして、この本を手に取ってみてはいかがでしょうか。
(文・製版部 穂積)