チェコSF短編小説集2 カレル・チャペック賞の作家たち
編:ヤロスラフ・オルシャ・Jr+ズデニェク・ランパス
編訳:平野清美
DTP:平凡社制作
装幀:中垣信夫
発行:平凡社
発行日:2023/2/10
判型:B6縦変型判(160×110mm)
頁数:512p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、特色1C(特グレー)、カバーはマットPP加工
用紙:HL用紙、雷鳥コートN、ヴァル
製本:あじろ綴じ並製本
今回ご紹介するのは、ヤロスラフ・オルシャ・Jr、ズデニェク・ランパス編、平野清美氏編訳の『チェコSF短編小説集2 カレル・チャペック賞の作家たち』です。
1968年のソ連軍を中心とした軍事侵攻以降、冬の時代を迎えていたチェコスロヴァキア。80年代、ゴルバチョフのペレストロイカが進むとSF界にも雪融けが訪れます。学生らを中心としたファンダムからは〈カレル・チャペック賞〉が誕生し、多くの作家がこぞって応募しました。
アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、フィリップ・K・ディックなどのSF小説の巨匠も知らぬまま、手探りで生み出された熱気と独創性溢れる13編が収録されています。
オンドジェイ・ネフ「口径七・六二ミリの白杖」には、盲人のヒーローが登場しますが、これは「座頭市」がモデルとなっているそう。また、多くの作品にジョン・レノンやビートルズへの言及が見られ、当時のチェコの作家にとって、自由と抵抗のシンボルとなっていた背景などもうかがえます。
不遇の時代を経て、SFファンたちの組織的な盛り上げ(ファンダム)により、第二の黄金時代を築く礎となったカレル・チャペック賞が生まれました。唯一の出版(を黙認された)プラットフォームから、若手の登竜門となったチャペック賞。現在活躍する作家たちも、多数輩出しています。チェコ独自のSFを堪能できる1冊。ぜひご一読ください。