知と奇でめぐる近世地誌 名所図会と諸国奇談

著:木越俊介

装丁:中山銀士
DTP:中山デザイン事務所(金子暁仁)

発行:平凡社
発行日:2023/3/24

判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:112p
製版・印刷:スミ、プロセス4C、特色1C(特茶)、カバーはグロスPP加工
用紙:オペラクリームマックス、オーロラコート、OKエルカード+
製本:あじろ綴じ並製本

今回は、木越俊介氏著『知と奇でめぐる近世地誌 名所図会と諸国奇談』をご紹介いたします。地域への関心が多様な地誌、名所図会や諸国奇談を生み出した近世後期、未知・珍奇・超自然・神秘・怪異・怪談・奇談、この「奇」という、各時代の世の常識に照らすと不安定要因となりかねないものを、地誌はいかに取り扱い、もしくは取り扱わなかったのか。各時代のその仕方に知のありかとその変容を読みとります。

江戸という時代が多様に生み出した地誌は、土地の特性とその歴史性を提示し、読み手がそれを享受する高度に知的な営為です。その際、確実・客観的な記事の傍らで確たる物証のない話、信憑性に欠ける情報とどう向き合うか、書き手・読み手にとって未知の事柄をどう提供しようとしたのでしょうか。

第一章では、18世紀半ばの民撰地誌類について検証し、続く第二章、三章では、19世紀の変わり目の前後の時期に名所図会のブームがあったことに着目、そこに奇なるものはどの程度まで記述されるのか、という点をめぐって、多くの書を記した秋里籬島(りとう)とそれ以外の作者のてによるものに分けて検証しています。

第四章においては、『東西遊記』がもたらした諸国奇談ブーム下に出版された諸書のうち、地誌的要素を有する作品の内容を検証し、『東西遊記』からの影響を見極めながら、名所図会における奇の位置づけとの比較を試みます。最後の五章で、19世紀に入り、以上の諸要素を融合した新たなる地誌が出現することを指摘します。

江戸時代後半、「奇」はどのように「知」の体系に位置づけられようとしていたかに注目し、当時の人々の「知」のゆくえをたどります。ぜひご一読ください。