稀書探訪
著者:鹿島茂
写真:鹿島直
ブックデザイン:白井敬尚形成事務所(白井敬尚、三橋光太郎、道川雄介)
校正:栗原功
発行:平凡社
発行日:2022/5/25
判型:B5縦判(257×182mm)
頁数:332p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、特色1C(特金)、特色2C(特茶、特ピンク)、プロセス4C+特色1C(特ピンク)、カバーはグロスPP加工
用紙:b7ナチュラル、オーロラコート、ビオトーブ GA-FS ワインレッド
製本:糸かがり並製本
今回は、鹿島茂氏の新刊『稀書探訪』をご紹介いたします。
ANAの機内誌『翼の王国』の人気連載「稀書探訪」(全144回)が待望の書籍化! 著者による尽きせぬ古書愛が実現させた珠玉のコレクションの全貌が明らかに。
「鹿島茂コレクション」として知られる、19世紀ロマン主義時代のイラストレーターによる挿絵本や、19世紀を中心とする地誌・風俗画、風刺画の入った新聞、モードのグラフィック資料など、稀少な書籍や資料をカラーページ満載で一堂に総覧できます。
鹿島茂氏は、元明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。1949年横浜市生まれ。1973年東京大学文学部仏文科卒業。19世紀フランスの希覯書を中心に膨大な古書コレクションを有し、東京都渋谷区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設しています。本書の写真を担当している写真家の鹿島直氏はご子息にあたります。
フランスの古書に憑かれてから、早いもので、もう40年もたってしまった。
この間、『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)や『それでも古書を買いました』(白水社)に書いたように自己破産寸前までいき、消費者金融ビルのすべての業者から限度額一杯まで借りていたこともある。
なぜそこまでして古書収集を続けたのかといえば、収集という名のデーモンに心身を乗っ取られていたからと答えるほかはない。つまりいつのまにか私の中に入り込んだ収集デーモンが私の意思とは関係なく働いて、昔風の言葉でいえば私を使嗾(しそう)し、さまざまなジャンルのフランス古書を収集せしめたということである。(「はじめに」より)
かように収集デーモンに取り憑かれた鹿島氏ですが、収集家としての私Aと表現者としての私Bが分裂し、利害に反するような行動をしながらも、最終的には、多くを集め、多くを書くというその行為において類似性と差異性というオートマティズムが働いたため、すなわち「アルものを集めて、ナイものをつくり出す」という同じ構造、同じ布置に落ち着いたとのこと。
その証拠ともなる本書は、『翼の王国』での連載「稀書探訪」144回分を一冊にまとめたものであり、そこで取り上げた144冊の本を一堂に展示する展覧会は千代田区立日比谷図書文化館で開催される運びとなりました。
144回の連載では毎回違う古書が取り上げられたのですが、鹿島氏曰く、「本書になんらかの価値があるとすれば、この144通りの古書の『差異』にあると思う」そうです。
フランスの古書は仮綴じ(ブロシェ)の状態で購入した人がそれぞれ装丁屋に出すため、古書になると、一冊一冊すべて異なった本になるそうです。この「差異性」こそがフランス古書の本質であり、フランス古書の神は、小さな差異にこそ宿る、と鹿島氏は言います。フランス古書の本質である「無限の差異性」を愛する人には楽しんでいただけるのではないかと。
製版、印刷については、入稿画像の雰囲気を残しつつ明暗を出し、全体的に赤味を押さえて黄色味の強いウォーム方向に仕上げました。用紙の特性も活かし、インキをかなり盛り込むことで暗部の締まりも出しています。
軽妙な語り口で古書収集の悲喜こもごもが綴られ、読者をフランス古書の世界に誘う本書。千代田区立日比谷図書文化館にて2022年5月20日(金)~7月17日(日)に開催される展覧会「鹿島茂コレクション2 『稀書探訪』の旅」と併せてぜひお楽しみください。
特別展鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅 | 展示情報 | イベント・展示情報 | 千代田区立図書館
特別展鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅 ※ 本ページのすべての画像の転載・複製を禁止します。 今後の新型コロナウイルス感染拡大状況により、変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。 鹿島 茂(かしま しげる)プロフィール …