魔法ものがたり 禁じられた魔法の世界(上)/妖精と魔女の真実(下)

著者:クリス・コルファー

訳者:田中志文

発行:平凡社
発行日:2021/12/10 (上巻)、2022/5/25(下巻)

判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:328p(上巻)、292p(下巻)
製版・印刷:スミ、特色1C(特橙、特緑)+スミ、プロセス4C、表紙、カバーにはグロスニス
用紙:OKトップコート+、OK特アートポスト+
製本:あじろ綴じ上製本

今回は、クリス・コルファー著、世界中で話題沸騰のファンタジー小説『魔法ものがたり』をご紹介いたします。2022年5月現在、世界累計100万部突破、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー1位にもなっています。また、この本はクリス・コルファーの世界的ベストセラー『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』の前日譚でもあります。

主人公ブリスタルは本を読むことが大好きな14歳の女の子。しかしそんな彼女が暮らす世界は、魔法は罪、女の子が学問を学ぶのも、本を読むことさえ罪となり、特に魔法を使った疑いをかけられようものなら、一族郎党処刑されたり、一生強制労働を課されてしまう理不尽なものです。

そんな世界で、突然魔力に目覚めてしまったブリスタルは、魔法をあやつる妖精の修行をするため、〈マダム・ウェザーベリー魔法アカデミー〉へ入学し、タンジェリーナやスカイレン、ザンザスといった妖精見習いたちと一緒に学び成長しながら、冒険へと旅立ちます。

著者のクリス・コルファーはアメリカの人気ドラマ『glee/グリー』のカート・ハメル役でも有名な俳優ですが、自身がゲイであることをカミングアウトしており、過去のインタビューなどで学生時代にはいじめにあった経験についても語っています。

この物語は対象年齢小学校高学年~大人まで幅広い読者に訴える作品になっていますが、女の子や魔法を使う人が理不尽な差別を受ける世界というのは、ファンタジーとしてではなく、今私たちが生きている社会の問題にも相通じるものがあります。

LGBTQの方々や女性を対等に見なさない国や地域はまだ多くあり、女性に教育を受けさせなかったり、親が娘をお金のために少女の年齢で結婚させてしまったり、同性愛を罪として死刑にしてしまったり…など差別や虐待はまだなくなってはいません。

そういった現実世界でもあり得る理不尽や困難に直面した時どうやって立ち向かっていけばいいのか、この物語は力強く私たちに訴えかけてくれます。どんどん強くたくましくなっていくブリスタルたちの今後の活躍も気になりますので、続編があるといいですね。

面白いファンタジー小説というだけでなく、この物語には人生をより素晴らしく生きるための道標が示されています。ぜひ、ご家族で一緒にお読みいただき、感想を共有していただけたらと思います。

企画・編集:合同会社イカリング
装幀:アルビレオ