サラ・ムーン写真集 FROM ONE SEASON TO ANOTHER

著者:Sarah Moon サラ・ムーン

デザイン:Guillaume Fabiani ギョーム・ファビアーニ

発行:Take Five&Akio Nagasawa Publishing
発行日:2018/3

判型:B5縦変型判(250×230mm)
頁数:102p
製版・印刷:プロセス4C+特色1C(特グレー、本文)
用紙:ミセスB F オフホワイト
製本:上製本、ドイツ装

今回は、世界的人気の写真家サラ・ムーンの写真集「FROM ONE SEASON TO ANOTHER」をご紹介いたします。

サラ・ムーンが近年力を入れているカラー作品のみを纏めたもので、彼女にとってカラー作品のみで構成された作品集は初めての試みです。内容構成は色をテーマとした5つの章に分かれ、それぞれの章は、サラの詩的なテキストより始まります。シークエンスは写真集タイトルが示すとおり、季節が移りかわるがごとく、章ごとに趣が展開されていく構成です。

サラ・ムーンは1960年代にパリでモデルとして活躍したのち、1970年代からファッションや広告分野で写真家のキャリアをスタートしました。シャネルやディオールなどハイブランドの仕事にも多く携わり、95年に「パリ写真大賞」を受賞、2008年刊行の写真集『Sarah Moon 1,2,3,4,5,』が「ナダール賞」を受賞している、世界的にも非常に熱狂的ファンが多い写真家です。

サラ・ムーンの写真といえば、独特のソフト・フォーカスや多重露光のテクニック、ネガの洗浄などを駆使した絵画のようなタッチが特徴で、この世の物とは思えない幻想的で美しい世界に惹き込まれます。

彼女が近年取り組み始めたカラー写真は、モノクロ同様の絵画的なアプローチはそのままに、我々をノスタルジーに誘い、感傷的な気持ちにさせます。彼女の作品は、モノクロでも敢えて傷をつけたり汚したりして、写真に降り積もった年月を想像させますが、カラー写真でも同様の試みを行い、さらに「色」の要素が加わったことでより絵画的になったように思います。

今回の写真集制作にあたっては、版元のAkio Nagasawa Publishingの長澤氏が、サラと綿密な打ち合わせを行ったそうで、彼女の強い要望として、「色は鮮やかにせず、色味は抑える」ということがあったぞうです。

この要望に対し、例えば赤や紫などの場合はマゼンタに対する反対色のシアンを多く加え、濁らせたりくすませたりしてビビッドではなくダスティな方向に持っていきました。プリンティングディレクター曰く、「引き算より足し算」とのことです。

サラは過去のインタビューで次のように語っています。「写真は二度と出会うことはできない、その時のその一瞬を切り取り、とどめることのできるもの。瞬間や時間を問題にした表現です。だから必然的に“時”は私にとってとても大切なものであり続けてきました。」

この二度と出会うことのできない、一期一会の瞬間をとどめたサラの美しい写真たちは、永遠に私たちを魅了し続けることでしょう。モノクロよりも少し饒舌な、サラ・ムーンのカラー写真集。ぜひ皆様のコレクションにお加えいただきたいです。

FROM ONE SEASON TO ANOTHER – サラ・ムーン | AKIO NAGASAWA

1941年フランス生まれ。モデル業のかたわら写真を撮り始め、70年から写真家として活動を開始。ファッション誌のエディトリアルやブランド広告のほか、コマーシャル制作、映像なども手掛る。 …