妖怪たちの秘密基地 つくもがみの時空
著者:齋藤真麻理
装丁:中山銀士
DTP:中山デザイン事務所(金子暁仁)
発行日:2022/3/15
発行:平凡社
判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:104頁
用紙:嵩高書籍55クリームA、OKエルカード+、パールコートN
製版・印刷:本文はスミ、表紙は特色1C(特茶)、カバーはプロセス4CにグロスPP加工
製本:あじろ綴じ並製本
今回ご紹介するのは齋藤真麻理さん著の「妖怪たちの秘密基地 つくもがみの時空」です。
「妖怪たちの秘密基地」ってなんだかワクワクするタイトルですが、捨てられた古道具たちが人間に復讐しようとする室町時代の物語「付喪神絵巻」について、「都市空間」「教養」「ことば」のコンテクストから学術的に考察しています。
「付喪神絵巻」とは、康保のころ(964-968年)年末の煤払い(今でいうところの年末大掃除)の日に捨てられた様々な古道具たちが、人間を深く恨み、「付喪神」となって人間を襲い、享楽の限りを尽くしますが、護法童子や尊勝陀羅尼(そんしょうだらに)たちの密教の法力で調伏されてしまいます。
改心した付喪神たちは、一蓮上人の下を訪れ出家し、深山幽谷で修行を重ねたのちに成仏する、という物語です。
本書では「都市空間」の章では、付喪神が悪事を重ねたエリア「妖怪ライン」について、「教養」の章では、絵巻物に描かれた「付喪神の宴」と「歌仙画」(優れた歌人の和歌と肖像をあらわした大和絵)との関係性の分析がなされます。
「ことば」の章では「付喪神絵巻」においても「付喪神」という表現が冒頭のみで、以降は「妖物」=バケモノとして語られているが、その挿絵と本文を見ていくと「バケモノ」の属性(キャラクター)が浮かび上がり、挿絵を読み解く面白さが浮かび上がると考察されています。
カバーに使用されている付喪神(妖怪、バケモノ)たちの姿は、どこかユーモラスで愛らしくも映ります。ここにはご紹介しきれませんでしたが、三つの視角から「付喪神絵巻」を読み解くとても面白い内容です。ぜひ書店などでお求めください。