前回に引き続き、プリンティングディレクター高栁による日本大学芸術学部写真学科での講義内容を掲載します。

第一回目はこちらからご覧ください。

インク・印刷方法について

次にインクの話です。印刷のインクって、皆さんがプリンターなんかで使うインクと比べて非常に粘り気があるんです。昔の朱肉、最近あまり使われないですが、あれよりも印刷のインクってもっと粘り気があります。

印刷インクというのは、簡単にいうと色を表す顔料。それから油成分であるベヒクル。ロジン変性フェノール樹脂とか色々あるんですけれども、顔料というのは印刷インクの中にどれくらい入っていると思いますか?1キロの中に何パーセントくらいが色を表す成分になっていると思いますか?

濃いインクだと顔料の比率が上がっていくんですけれど、大体85-80%が油成分なんです。

このドロドロした油成分の中に均等に顔料が混ざっているんです。小さな顔料がこのように均一に混ざっていると。これが印刷インクです。よろしいですか。

今度は印刷方法の話をします。

皆さん、印刷の方法って色々あるんですよ。私の話で恐縮ですが、私は1955年、戦後10年。日本がまだ貧しかった時代に生まれました。小学校の時に先生が出す宿題、ガリ版印刷っておわかりですか?ロウ紙に先のちょっと丸まった鉄のペンで描いて、そこからインキが通るような仕組みです。

いろいろな印刷方法があるんですが、特にマスな印刷、大量に印刷物をするような印刷は、オフセット印刷とグラビア印刷というのが代表的です。

皆さん、シルク印刷ってご存知ですか?今は、シルクとかはロットの少ない特徴のある印刷物に使われる印刷方式の一つですね。

今からお話しするのは大量生産用の印刷についてです。皆さん「グラビア」って知ってますか、まだ死語になってませんよね?

「ギリギリ..」

アイドルの方の写真とか、グラビアって言いますよね。あれはグラビア印刷からきているんです。

大きく分けると、マスの印刷は、オフセット印刷とグラビア印刷にわかれます。

グラビアというのは別名凹版です。凹版というのは、これが印刷用の版だとして。この凹んだ部分にインキが入ります。

オフセット印刷というのは平版といいます。版があって、この上にインクがのります。先程申し上げた通りインクの80%くらいは油ですから油の性質を持っていますよね。版には親油層と親水槽、水と仲が良い部分があります。そして、この親油性の部分だけにインキが乗るんです。

これが、印刷方式の違いになります。簡単に申し上げますと、穴の中にインキが入るか、親油層のうえにインキが乗るかの違いになります。

それで、色の濃淡をどう表すか。

こちら(グラビア)が色の濃淡を体積比で表すのに対して、平版オフセット印刷は面積比なんです。例えば、色の薄いところにはどうインクが乗るかというと、点が小さいところにポツッとインキが乗っているだけになりますから薄くなります。これがオフセット印刷です。色の濃淡を面積比で表します。

グラビア印刷、こちらはどう表すかというと、100%紙の白地が出ません。淡い色はインクの量が体積で少ないというわけです。

全く印刷方式が違います。ただし今の社会ではコストが高いのでグラビアは身近な印刷物ではあまり採用されません。胴のシリンダーをレーザーで穴を空けて、その上にクロームメッキしますから、一色作るのに版台が何万円とかかる。非常にコストが高い。

ところが、オフセット印刷の場合は1枚2500円くらいで版がつくれますので非常に安い。こちらが主流になっている。面積比で色の濃淡を表現する方ですね。

これが、紙・インク・そして印刷方式の違いです。これからが本題です。(続く)