憲法九条論争 幣原喜重郎発案の証明
著:笠原十九司
装幀:菊地信義
発行:平凡社
発行日:2023/4/14
判型:B6縦変型判(172×105mm)
頁数:472p
製版・印刷:スミ、特色2C(特青+特スミ)、特色1C(鉛色)、特色1C(特赤)+スミ、カバーはマットPP加工
用紙:淡クリーム琥珀N、雷鳥コートN、Nプレミアムステージ ホワイト
製本:あじろ綴じ並製本
今回は笠原十九司氏著『憲法九条論争 幣原喜重郎発案の証明』をご紹介いたします。
長年、日本国憲法はGHQから押しつけられたもので第九条も例外ではないという「俗説」が広まってきた。だが、憲法九条の「戦争放棄」条項を提案したのは日本政府の最重要人物だった。その名は、時の首相・幣原喜重郎──。占領下の時代背景と史料を読み解きながら、幣原が九条の提案者であったことを丹念に論証し、左右両方向からの「幣原発案否定説」を徹底批判。「百年後には私たちは予言者と呼ばれますよ」。幣原が九条に託した「平和への想い」とは。
ー平凡社ホームページ紹介文より
日本国憲法は1946(昭和22)年11月3日に公布されました。人類史上最初に戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた憲法九条の発案者が誰であったかをめぐっての論争はまだ決着がついていません。しかし笠原氏は「一国の憲法の、人類史における平和のための宝といえる条項の発案者が謎であるはずはない。」と言います。それはいわゆる「平野文書」を無視してきたことによるものと言えるそうです。
公的記録や公的証言を残さなかった幣原側の憲法九条発案を裏付ける傍証資料である「平野文書」とは、幣原元首相が亡くなる直前に戦争放棄条項などが生まれた事情などについて、衆議院議員であり幣原元首相の秘書官であった平野三郎に語ったもので、『幣原先生から聴取した戦争放棄条項等の生まれた事情について』と題されたその文書は、1964(昭和39)年2月に憲法調査会に提出されました。本書ではこの「平野文書」についても丁寧に検証されています。
日本がポツダム宣言を受諾して連合国に無条件降伏し、アメリカ軍主体の連合国軍の占領下に置かれ、マッカーサー連合国軍最高司令官ならびに連合国軍総司令部(GHQ)による占領政策、戦後改革が推進された過程において、幣原首相によって発案された憲法九条と象徴天皇制は、マッカーサーと幣原二人だけの「秘密会談」によって提案され、「秘密合意」が成立しました。共産主義革命の阻止と天皇制を継続したいアメリカの思惑と幣原の平和への願いが合致して生まれたと言えるようです。
今までの俗説を鵜呑みにすることなく、憲法九条の成り立ちについて丹念に検証された本書を読むことは、今後憲法九条について考えるうえでも非常に意味のあることではないでしょうか。また幣原が九条に込めた平和への思いについても詳細に触れられています。ぜひご一読ください。