魔術師列伝
著:澤井繁男
装丁:松田行正+杉本聖士
発行:平凡社
発行日:2023/3/15
判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:208p
製版・印刷:スミ、特色1C(特赤、特銀)、プロセス4C、カバー、帯はマットニス
用紙:オペラクリアマックス、ヴァンヌーボV-FSスノーホワイト、Magカラー ボルドー、Magカラー ブリック
製本:糸かがり上製本
今回は、澤井繁男氏著『魔術師列伝』をご紹介いたします。中世と近代のはざまに躍動した魔術師と錬金術師たちの人物伝。複雑で難解とされてきた魔術的世界観と錬金術的宇宙観を、100点を超える豊富な図版と明晰な解説で読み解きます。本書は「WEB『太陽』」で連載されたものをまとめたもので、前半が「魔術師列伝」、後半は「錬金術師列伝」となっています。
まず、ここで語られている「魔術師」とは、自然魔術師のことを指しています。「具体的には自然の裡(奥底)に、霊魂(命)を求めて、自然を『質』で把握しようとした」人々のことです。ガリレイのように自然を数学的見地から「量」で捉えるのではなく、自然を生きているとみる有機的自然観(アニミズム)の立場に立っていたため、一神教のキリスト教からは異端の烙印を押されました。
アラブ民族の活躍、キリスト教や知の歴史、ヘレニズムとヘブライズム双方の文化的相違などに言及しながら、自然魔術師たちが登場してきます。ルネサンス末期までの、テレジオ、デッラ・ポルタ、ブルーノ、カンパネッラなど、多くの自然魔術師たちの思想やその時代背景への理解が深まります。
後半は「錬金術師列伝」。土中の鉱物を金銀などに変えようとする錬金術は、「鉱物の裡に霊魂の存在を認め、それを救済し、その後人間を救う」ものであって、自然魔術とは異なるものだそうです。ですが、キリスト教では人間の霊魂を救うのが第一義的なので、やはり錬金術も異端視されました。パラケルススの出現、”最後の錬金術師”ニュートンまで、その歴史や意義を、知的時代背景とともに解説しています。
異端とされたオカルト的知の体現者「魔術師たち」「錬金術師たち」の誕生から終焉までを、わかりやすい文章とたくさんの図版で楽しむことができる知的好奇心を刺激する一冊。ぜひご一読ください。