イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術
著:ペッレグリーノ・アルトゥージ
監訳:工藤裕子
訳:中山エツコ、柱本元彦、中村浩子
装幀・組版:岡本洋平(岡本デザイン室)
発行:平凡社
発行日:2020/7/15
判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:720p
製版・印刷:特1C(特銀)+スミ+マットニス、スミ、特1C(特銀)
用紙:ヴァンヌーボV スノーホワイト、クロコGA 黒、クロコGA セピア、三菱嵩高書籍65A
製本:糸かがり上製本、箔押し
今回ご紹介するのは、2020年刊行、「イタリア料理の父」と呼ばれるペッレグリーノ・アルトゥージ著『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』です。各地の郷土料理を渉猟し初めてイタリア料理として大成した聖典。大古典でありながら、イタリアでは一家に一冊あると言われる、美味しく健康によい現役レシピ790!
2020年はペッレグリーノ・アルトゥージの生誕200周年であり、それを記念して出版された初の日本語版です。ペッレグリーノ・アルトゥージは1820年、教皇領フォルリンポポリの豊かな商家に13人兄弟姉妹の唯一の男児として生まれます。1851年、一家はフィレンツェに移住。絹の商売を始めた父を手伝いますが、50歳で商売から手を引いて遺産で暮らし始め、1878年にウーゴ・フォスコロ伝を出版するなど文筆業に専心。
20年をかけて主に北イタリア中心のレシピを集めて執筆、編集した『厨房の学とよい食の術』を1891年委自費出版。以来20年間にわたってその改訂を重ね、本人が手掛けた最後の版は第15版、累計販売部数58,000部に達しました。1911年90歳で死去。
当時のイタリア人の食事の中心であったミネストラ(パン入りのスープ)のレシピは多数紹介されており、当時の食卓の様子を思い浮かべることができます。またお菓子やジェラートのレシピは計123も紹介されていますが、その多くが現在も愛され、レストランや菓子店で食べることができる伝統的なものです。
イタリア料理史的には、本書は1861年のイタリア統一以降の社会変革を経て、一般庶民にとって料理が生きる手段から喜びへと変革していった、近代イタリア料理史を知る意味でも重要な作品。3人の翻訳者の方々によって、シンプルで読みやすい日本語で書かれたレシピの数々は、厨房から漂う美味しそうなにおいまで想像させてくれます。イタリア料理への理解が深まり、その美味しさに想像が膨らむ一冊。ぜひご一読ください。