別冊太陽 佐伯祐三 その眼がとらえた風景
監修:高柳有紀子
発行:平凡社
発行日:2023/2/25
判型:A4縦変型判(290×220mm)
頁数:168p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、表紙はグロスPP加工
用紙:雷鳥マットコートZ、ブランシュ-TZ
製本:あじろ綴じ並製本
今回ご紹介するのは、『別冊太陽 佐伯祐三 その眼がとらえた風景』です。30歳でパリに客死した夭折の画家・佐伯祐三。駆け抜けるように近代の風物を描き、新しい表現を求め格闘した、その生涯と画業を紹介。構図や描法から佐伯絵画の魅力に迫る!
画家・佐伯祐三(1898(明治31)年-1928(昭和3)年)は、大阪府西成郡中津村(現・大阪市北区中津)の光徳寺に生まれます。東京美術学校西洋画科卒業後の1923年、パリに向けて日本を出港。翌年初夏、フォーヴィスムの巨匠ヴラマンクに「アカデミック!」と一喝され、作風を模索しはじめます。やがてユトリロに触発され、壁の物質感を厚塗りの絵具で表現したパリの下町風景の連作を展開し、1925年のサロン・ドートンヌで入選を果たしました。
結核に侵されていたいた佐伯は、1926年に一時帰国し、下落合の風景や大阪での滞船の連作を制作しましたが、1927年8月に再度渡仏。パリの街並みを精力的に描き、広告の文字を題材とする繊細で跳ねるような線の表現で、独自の画境に達します。1928年3月、パリへ戻ってから体調が悪化し、8月16日、パリ郊外の精神病院で30歳の若さで亡くなりました。
二度の渡仏を経て、30歳で夭折した佐伯祐三が、本格的に画業に取り組んだのはわずか4年余りでしたが、生き急ぐかのようにパリで自分の全てを注ぎ込んで絵を描き続けました。本書では、豊富な図版、写真資料とともに、佐伯の生涯、構図や描法にいたるまで、人々の心をとらえ続ける佐伯の絵画の魅力について徹底的に掘り下げられています。ぜひご覧ください。
また、東京ステーションギャラリーと大阪中之島美術館では、特別展「佐伯祐三 画家としての自画像」が開催。(大阪は2023年4月15日(土)~)時代を駆け抜けた画家・佐伯祐三の画業を一覧できる展示となっていますので、本書とともにぜひお運びください。
編集:竹内清乃、菅原悠、坂本裕子(アートよろづや)
デザイン:川添英昭
地図作成:尾黒ケンジ
撮影:宮島径
校閲:栗原功
担当プリンティングディレクターより
細野 仁
佐伯の作品は重厚な油絵として有名で、油絵具が乾く間もなく塗り重ねた技法ですが、大胆なタッチと繊細なタッチが随所に見られます。
また、乾燥を早め塗り重ねる時間を短縮する為に、キャンバス地の下地に亜麻仁油(印刷でいうところのワニス)を塗るようなこともしていたと記憶していましたので、その特徴を再現するよう配慮いたしました。
絵に使われてる『白』はその油が時間と共に焼け、やや黄色味を帯びていると想像し、製版ではややウォーム系の白さをイメージして絵画全体に濃度・立体感を持たせるように設計しました。印刷も全体の印象が弱くならないように、高濃度の印刷を意識しながら刷りました。
特別展「佐伯祐三-自画像としての風景」公式サイト
およそ100年前、大阪、東京、パリの3つの街に生き、短くも鮮烈な生涯を終えた画家、佐伯祐三(1898-1928)。1924年に初めてパリへ渡ってからわずか4年余りの凝縮された画業の中で、石造りの街並みを荒々しく重厚な筆致で描く作風や、軽やかで繊細な線で画面を埋め尽くす独自の画風に到達しました。私たちは、佐伯の絵画に向き合う時、風景に対峙する画家の眼、筆を走らせる画家の身体を強く想起させられま…