公文健太郎写真集 耕す人

著:公文健太郎

ブックデザイン:伊勢功治

発行:平凡社
発行日:2016/7/6

判型:B5横変型判(182×250mm)
頁数:144p
製版・印刷:プロセス4C、特色1C(特グレー)、プロセス4C+超被膜グロスウェットニス
用紙:b7トラネクスト、タント N-8
製本:糸かがり上製本

今回ご紹介するのは、写真家・公文健太郎氏の写真集『耕す人』。「日本の風景」は「農業の風景」だ──。北は北海道紋別郡から、南は沖縄県西表島まで、気鋭の写真家が撮り歩いた「美しき農村」。

時としてふと立ち止まり、眺めてしまう風景があった。僕の場合、それは自然が織りなす雄大な景色ではなく、人の営みがつくる風景であることが多かった。みかん畑に囲まれた山あいの集落。美しく積み上げられた石垣で層をなす段々畑。夕日に照らされた田園風景。そして静かな風景に囲まれ農作業に勤しむ人々の姿が、時間の流れを感じさせてくれた。そんな風景に感動するたびに、「日本の風景」は「農業の風景」なのだと気付かされた。

ーあとがきより

公文健太郎氏は1981年生まれ、ルポルタージュやポートレートを中心に雑誌や書籍、広告などでの活動と並行して「人の営みがつくる風景」をテーマに作品制作を続けています。

この写真集には、日本各地の農家の方々を訪れ撮った「日本の原風景」が収められています。公文氏いわく「厚かましく」農家の方々に甘えてきたそうですが、朝ご飯をご馳走になったり、車のトランクいっぱいの持たせてくれる野菜やお米のお土産をいただいたりという、その場で生まれた心温まるふれあいまでが、写真集を通しての空気感を生み出しているように思えます。

現在都会に暮らしていたとしても、故郷のあの野菜、あの果物がおいしいよねと思い出されたり、田舎の祖父母の家に遊びに行った時に見た水田や畑の風景が懐かしく感じられたりしますが、この写真集の「日本の原風景」はまさに日本人の琴線に触れるものとなっています。

全体的にアンダーな印象の写真からは、土や農作物の力強い生命力が、日に焼けた農家の方々の顔や手からは、そこに刻まれた皺までもたくましく感じられます。

2023年1月28日(土)まで、ギャラリー冬青にて、写真展「耕す人」が開催されています。10年にわたって「農」の風景を訪ね、とらえてきた作品群が展示されていますので、ぜひお運びください。またこちらの写真集もあわせてお楽しみいただければと存じます。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

私自身の幼少期の記憶、原風景と同じ静かさ、匂い、音を感じる写真でした。

明るすぎず暗すぎない塩梅で、人々の顔の皺や表情もほのかにディテールがわかるように製版いたしました。ハイライトの光の入り方、調子の表現については、公文さんと1点1点綿密に打ち合わせしながら進めました。印刷の際には、インキをしっかりと盛り込み、暗部のディテールを出しています。

TOSEI-SHA 公文 健太郎 写真展「耕す人」

「農」の風景を訪ねる旅を始めて10年が過ぎようとしている。旅先で出会った風景は目に焼き付き、交わした農家との会話と、舌で感じた味は僕の記憶にしっかりと残っている。撮った写真以上にその蓄積が今の僕をつくっているように思う。初めて出会った人には必ず出身地を聞く。その土地の「農」が会話のきっかけをくれるからだ。 …