石元泰博写真集 桂離宮

著:石元泰博

装丁・デザイン:太田徹也

編集:中原君代
製本:大口製本印刷

発行:六曜社
発行日:2010/5/20

判型:A4縦変型判(260×220mm)
頁数:216p
製版・印刷:特色3C(スーパーブラック+硬調スミ+特グレー)+超被膜グロスウェットニス、カバーはグロスPP
用紙:ベルべナチュラル、トリパイン シルク、ニューエイジ、新バフン紙 ねずみ、カンパスC18モスグリーン
製本:糸かがり上製本、箔押し

今回ご紹介するのは、2010年刊行、写真家・石元泰博氏の写真集『桂離宮』です。この写真集は、当時限定1,000部の完全限定生産でした。



石元泰博氏が1954年に撮影した「桂離宮」を、半世紀の時間を経て世に問う、平成版「石元泰博 桂離宮」。

厳密な構図、白黒のトーンとバランス、シーンの切り取り方、どれも斬新で強烈な石元の写真は、たちまち旋風を巻き起こした。
もっともモダンで新しい感性が、もっとも古い文化の古層と出会ったのである。

—内藤 廣 (序文より抜粋)

一部、1981年撮影の作品も加えて、新たなエディトリアルと最新の印刷技術により構成。石元泰博氏の眼が捉えた桂離宮の美の本質をモノクローム写真で堪能することができます。

またこの写真集は、第45回造本装幀コンクールにおいて、「経済産業大臣賞受賞」「日本印刷産業連合会会長賞」の二つの賞を受賞しています。

石元泰博氏(1921-2012)は、サンフランシスコに生まれ、3歳の時父の故郷である高知県に帰郷しますが、1939 年に再び渡米します。しかし、太平洋戦争勃発により、収容所生活を送ることとなりました。

終戦後、バウハウスの教育理念を継承したシカゴ・インスティテュート・オブ・デザイン(通称、ニュー・バウハウス)で写真の教育を受け、写真技法や造形感覚の研鑽を重ねます。1953 年頃からは日米を行き来し、戦後日本の写真界に多大な影響を与え、1969 年以降は日本を拠点に精力的な活動を展開しました。

この写真集のテーマとなる桂離宮は、京都郊外の桂川河畔に位置し、17世紀初頭から中頃に八条宮家の別荘として造営されました。書院や茶亭などの建築群とそれらを取り巻く庭園は、日本美の極致とも評されます。

石元泰博氏が初めて桂離宮を撮影したのは、アメリカでバウハウス流の造形感覚を磨き、来日した直後の1953年のこと。テクスチャーの際立つ敷石や、近代建築に通じる簡素な構成美をとらえ、モダニズムの神髄とも言える写真群は、国内外で高く評価される石元氏の代表作となりました。

1981年の撮影では、6年の歳月に及ぶ大改修を経た桂離宮を、装飾的な要素を取り込み、より空間的な広がりを持った視点によって、桂離宮の湛える重層性や多義性をもおおらかに写し取っています。

現在こちらの写真集は絶版となっていますが、2014年刊行の新装版も刊行されています。石元氏の真骨頂とも言える傑作写真集。図書館や古書店でお見かけの際には、ぜひお手に取ってお眺めください。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

石元先生との入稿会議の際、先生は同じ写真のプリントをすべて5枚ずつ出され、水平垂直でノートリミングのこれらの写真から、写真集に最適な1枚を選ばれました。

石元先生の完成度の高いモノクロプリントを再現するため、明部のハイライトはとばさず、暗部も階調をしっかり出しています。印刷はグレー、スーパーブラック、硬調スミのトリプルトーンで行いました。硬調スミは暗部の濃度が高く、通常のスミ版よりもコントラストを強くする狙いです。

明部を柔らかく見せたいというデザイナー様のご要望により、用紙はベルべナチュラルのご指定がありました。現在は生産中止となっていますが、落ち着きがあり暖かみのある白さが特徴です。